悪い夏

悪いのは夏ではなく、この映画の製作者たち…

悪いのは夏ではなく、この映画の製作者たち、プロデューサー、脚本、監督、そして視点が映画と同じであるならば原作者も含めた人たちですかね。

悪い夏 / 監督:城定秀夫

ネタバレあらすじ

レンタル DVD のキャンペーンで借りたものを正月休みに見た映画ですのであまり大きなことも言えませんが、世の中には単にエンタメで消費したり、茶化したりしてはいけないこともあると思いますけどね。

映画そのものは、多少好意的にとればいわゆる「正義」というものの脆さをやっているんですが、ひどいのは、「正義」の一番の担い手にみせかけているケースワーカーの宮田(伊藤万理華)の行為を男への執着というオチで茶化していること、そして、映画自身も貧困家庭として描いている古川(木南晴夏)に自殺未遂させながらそのまま放っておくという、単にストーリーの味付けのように利用していることです。

ラスト近くの全員揃ってのドタバタ乱闘騒ぎもいただけませんし、その後の宮田の手紙シーンも佐々木(北村匠海)のハッピーエンドも見ていて恥ずかしくなります。

とにかく、現に社会問題となっていることを単にドラマのネタとして消費するだけというのは「悪いこと」ですよ。

ざっとあらすじを俳優たちを中心に書いておきますと、

登場人物たち

映画がネタとして(はいけないのに、して…)いるのは生活保護の不正受給と貧困ビジネスです。

佐々木(北村匠海)は社会福祉事務所のケースワーカーです。生活保護受給者の山田(竹原ピストル)の家庭訪問に行きます。山田は明らかに不正受給です。

佐々木はいわゆる気弱で引っ込み思案の青年ですが、後半になりますと性格ゆえに溜め込んだものが感情的な凶暴さとなって現れます。北村匠海さんはこういう人物を演じるのが本当にうまいです。

佐々木の同僚に高野(毎熊克哉)がいます。高野はシングルマザーの林野(河合優実)に生活保護受給の見返りとして性行為を強要しています。この関係の発端を描いていませんのでなんとも言えませんが、林野も不正受給者ではあるのでしょう。

河合優実さんはこういう設定のキャスティングが多いですね。いや、そうでもないか、私の印象だけかも知れません。いずれにしても俳優としての力がわかりにくい俳優さんです。

佐々木のもうひとりの同僚宮田(伊藤万理華)が、高野の不正行為について告発があったと相談してきます。宮田は「弱者を装って国から金を貪っている不正受給者の不誠実さに対抗するには潔白さという武器が必要だ」と言い、高野の不正行為を見逃したらその武器を失うことになると言っています。

林野の知り合いに莉華(箭内夢菜)がいます。そのパートナーはキャバクラ(セクキャバ)を経営し、裏でヤクの売買もやっている金本(窪田正孝)です。山田(竹原ピストル)は金本のもとで売人をやっています。

窪田正孝さんはこういう怖い役もうまいんです。ワルさのキレがいいですね。この金本、手下とかいないのと思いますが、窪田正孝さんは一人でワルをやりきっちゃっています(笑)。

そしてもうひとり、すでに書きました実際に貧困にあえぐシングルマザー古川(木南晴夏)がスーパーで万引きしたり、捕まって仕事を失ったり、公園の水でしのいだりするシーンが挿入されます。

これで全登場人物です。

ドタバタ喜劇か

で、物語の展開は、まず林野が莉華(なぜ姓がない?…)に高野のことを相談し、それを知った金本は高野を脅して貧困ビジネスで儲けることを画策します。ホームレスを集めて高野を窓口に生活保護を申請させてそれをピンハネするという計画です。

佐々木は、宮田の正義感に煽られて二人で林野を訪ねることになります。宮田はストレートに性行為を強要されていないかと聞いています。林野はそれには答えず、二人が来たことを金本に伝えます。金本はあっさり高野を使うことをあきらめます(なんで?…)。

佐々木は林野への訪問の際に娘と仲良くなり、その後も度々訪ねるようになります。それを山田が知り、林野に金本には内緒で貧困ビジネスの共謀を持ちかけます。佐々木を誘惑して関係を持ちそれを録画して脅すという計画です。しかし、佐々木は自分は高野ではない、林野への気持ちは真剣なものだと自ら林野と関係を持とうとはしません。

林野は何を考えているのかはっきりしない人物になっています。自らの意志で行動を起こすシーンはラスト近くの乱闘騒ぎくらいで、自ら望んでいるのか嫌々なのかわからないままに誰かに言われて行動を起こす人物になっています。多分、これは演出ではなく、河合優実さんの考えと本人のキャラ(もちろん表向きのです…)がそのまま出ているんじゃないかと思います。

と、そうこうしているうちに計画が金本にバレてしまい、娘を人質のように取られて佐々木を誘導して(誘惑という感じではない…)関係を持ちます。

佐々木はもうどこかの時点から林野のアパートにただいまと帰ってくるようになっています。そしてある日のこと、そこには金本が待ち受けており、録画をもとに脅されて貧困ビジネスに加担するようになります。

佐々木はやけっぱち気味にキレた状態で窓口に訪れるホームレスに次々に生活保護を受給させていきます(そんな簡単にはいかないんだけどね…)。窓口に古川(木南晴夏)が受給の相談にやってきます。佐々木は古川を罵倒します。

多分、この佐々木がキレているシーンがこの映画の製作者たちの本音ですね。

佐々木のもとに刑事が訪ねてきます。古川が子どもを道連れにして自殺未遂をはかったと言います。それを聞いた大雨の夜、アパートに帰った佐々木が包丁を持って林野に死のうと言い出し、そこへ金本たちも来て大騒ぎになり、莉華が刺され、そこになぜか高野が登場、続いて宮田までがやってきて、宮田は高野を見つけるや私を騙したのねと不倫関係をぶちまけます。

後は登場人物全員でアパート内では物足りなかったらしく雨の屋外に出てまで大騒ぎです。

後日、刑務所の高野への手紙を書く宮田のシーン、「生活保護ビジネスの実態」の週刊誌のタイトルに金本、高野、山田の三人の顔写真のカットが入り、シーン変わって、清掃員として働く佐々木があり、その佐々木がアパートに帰り、廊下の子ども用の傘を片付けながらただいまと言って入っていきます。

当然、林野と暮らしているということでしょう。

感想:正義は脆い…

感想はすでに冒頭に書きましたのでもう何もありませんが、後に見たことを忘れて再び見ないようにとこうやって細々と書いている自分がなんとも恨めしくなる映画でした(笑)。

ああひとつありました。「正義」が脆いということはある意味真実ですので、それをきっちりと描く映画であればよかったんですがね。

とにかく、一度見てみてはいかがでしょうか。

原作もあります。作者の染井為人さんは1983年生まれ、ロスジェネ世代ですね。なるほど。