あなたの顔

ツァイ・ミンリャン監督、坂本龍一音楽

2013年のヴェネチア映画祭で「郊遊 ピクニック」が上映された際に引退を語った(らしい)ツァイ・ミンリャン監督ですが、真意は商業主義的なシステムでは撮らないということだったらしく、実際それ以降もショートフィルムやドキュメンタリーをたくさん手がけています。

この映画もそのひとつということなんでしょう。

台北に暮らす12人の一般人と俳優のリー・カンションさん13人の顔だけ、本当に顔のアップの映像だけで構成された1時間15分の映画です。平均するとひとり6分弱、その人の顔を見続けるわけです。

あなたの顔

あなたの顔 / 監督:ツァイ・ミンリャン

予想ではもう少し緊張感のある画になるのかなと思っていたのですが、意外にも穏やかと言いますか、落ち着いて平穏な空気が全編に流れていました。

その理由のひとつかと思いますが、カメラ位置は最初の2人とリー・カンションさんだけが正面からで後は横斜めから撮っていました。正面からの画も皆カメラ目線なのに焦点があっていないように思え(ただけかも?)、もしそうならどうやって撮っていたんでしょう。

それに、半分くらいの人が自分の過去を話し始めます。自発的にではなく、監督からでしょうか、問いかけに応じて話す場合が多いです。その話も思い出話を語るといった感傷的な雰囲気はあまりなく聞かれて答える感じです。何テイクか撮っているのかもしれません。

ツァイ・ミンリャン監督は本当にただ顔が撮りたかっただけなんだろうと思います。それ以外の意図はなさそうです。

 最後のカットはモダンな造りのホールのような室内の画で終えています。

「あなたの顔」公式サイト

台北中山堂という建物だそうです。日本統治時代の1936年に井手薫という方の設計で建てられ当時は台北公会堂と呼ばれていたとあります。この映画の撮影はここで行われたそうです。

台北公会堂 – Wikipedia

©CEphoto、Uwe Aranas

いろいろな様式の混ざった不思議な外観です。

映画の話に戻します。

音楽は坂本龍一さんです。特別印象に残る音楽ではありません。ちょっと遠慮したんでしょうか、音楽というほど音楽は感じられませんでした。

それにちょっと気になることが。坂本龍一さんのコメントに「完成した『あなたの顔』を観て、特に嬉しかったのは、最後の室内のシーンのために作った音を、ツァイさんはやはりそのシーンに使っていたことだ。言葉を交わさず、映像と音だけで意思が通じたと確信できる出来事だった。」とあるのですが、あの中山堂のシーンに音楽って入っていました?

私落ちてました?(それはない)


映画『あなたの顔』予告編

予告編は無茶苦茶情緒的に作られていますがこんな感じではありません。この音楽も使われていませんでしたが…。

とにかく、ツァイ・ミンリャン監督は今年のベルリン映画祭のコンペティションに「日子(Days)」という新作を出品しています。