ゆめのまにまに

東京蛍堂を舞台にした洒落(しゃらく)な映画

ディケイドという俳優のマネージメント会社の創立30週年を期に制作された映画だそうです。ですので出演はその所属俳優さんということだと思います。監督は張元香織さん、長編二作目ということです。見ている映画が張元監督のプロフィールに何本かあったことと東京の下町が舞台の人間模様がテーマらしいということで気持ちが動いた映画です。

ゆめのまにまに / 監督:張元香織

ロケ地の魅力は映画の魅力?

浅草六区通りにある「東京蛍堂」というアンティークショップがそのまま映画の舞台として使われています。どんな雰囲気かは GoogleMap にもたくさん写真が上がっています。

店の入口には「モボモガ御用達」なんて看板が出ています。

映画はもともと旅情や回想といったノスタルジックなものとは親和性が高いものですので、アンティークショップが舞台というだけでもう映画的になります。

それに、映画の中でも語られていましたが、そこにあるものにはどんなに小さなものにもそれを持っていた、あるいは使っていた人の思いや時間が刻み込まれているわけですから、ある意味物語の宝庫のような場所です。

さて、どんな物語が生み出されるのでしょうか。

シンプルな物語は現実か幻か?

意外とあっさりしていました(笑)。悪くはないんですが、やはりちょっとばかり退屈します。

真悠子(千國めぐみ)が熊本から東京に出てきます。車中だったか、機中だったかで「会えたら別れよう、会えなかったら忘れよう(違うような気がする…)」とノートに書き付けています。

東京蛍堂の店主、和郎(村上淳)に会いに来たのです。真悠子はホテル(旅館)をとり毎日蛍堂に通いますが、和郎は留守が多くなかなか会えません。それでもやっと最後の日(3日くらい?)に会うことが出来ます。

二人ともに言葉はありません。アンティークに囲まれた店の中、ふたりは見つめ合い(言葉はクサいけど画はそういうこと(笑))、真悠子がアンティークの台に置かれた和郎の手にそっと自分の手を重ねます。そして、真悠子からそっと唇を重ねます。

翌日、真悠子は帰りの人力車の上で晴れやかな笑顔を浮かべています。

映画は真悠子が和郎に会ったことが現実なのか幻なのかははっきりさせていません。

これがメインの物語なんですが、真悠子は毎日店を訪れますので店番のマコト(こだまたいち)が店を開けるルーティンが繰り返され、店を訪れるアンティーク着物好き(蒐集家?)、マニア、町の高校生、和郎の息子などとのやり取りが描かれていきます。

これだけです。ああ、人力車のお兄ちゃんの視線が割とフィーチャーされていました。その視線の中で、真悠子がなにかにつまずいて戻ってじっと見たり、翌日にわざわざその場所を見つめていましたが、あれは何だったんでしょう?

渋くて洒落(しゃらく)な映画

全体としては渋くまとまっていますがもったいないような気がします。

アンティーク着物蒐集家がルーペでアンティークをじっと見つめたりするシーンや、その女性が真悠子のネックレス(帯留め)に興味を持ったりと、なにか物語の取っ掛かりになることがいっぱいあるのですが、あくまでもシンプルな洒落(しゃらく)さを求めているのでしょう、それ以上には発展していません。

おそらく、アンティークとの出会いに男女の出会いを重ね合わせているのでしょう。そうしたセンスの良さは感じられますが、2時間じっと見つめるにはある種のベタさも必要だとは思います。