スッキリ解決。見終わって、全く疑問が起きない。しかし、と言うより、だからこそ、語ることがない。そんな映画でした。
スウェーデン発のミステリー・サスペンス。40年前の少女失踪事件の調査を大企業グループの会長(かな?)から依頼されたミカエルとリスベットが、その謎を解き、殺人犯に迫っていく。
ジャーナリストであるミカエル自身の抱える別のスキャンダルやリスベットの過去が随所に挟まれ、最後まで飽きることなく、ぐいぐい引っ張っていく。
その意味では、よくできた映画といえる。
日本人的感覚からすると、犯罪の理由付けに聖書からの引用やナチスを持ち出すのは、またかという印象がなくはない。暴力やレイプシーンが男性のゆがんだ性的欲望に根差しているといった描き方も、少し古い感じは否めない。
しかし、そういったマイナス面を補って余りあるのが、リスベットとミカエルのキャラクターではないかと思う。確かに、ハリウッドのこの手の映画からみれば、二人ともインパクトに欠けるし、洗練されてもいない。
リスベットは、天才的なハッカーとの設定だが、それがどれほどのことか、どんなにすごいことかは、ほとんど説明されない。ただ結果を出すのみである(ただ、実際にあの結果を出すハッカーはいないでしょう)。レイプされた後見人への復讐も小気味いい(ただ、そのグロさは見ていて気持ちよくはない)。
ミカエルを演じるミカエル・ニュクビトスは、「歓びを歌にのせて」で主役の指揮者を演じていた俳優で、北欧系の俳優に多い(と私が感じる)やや輪郭がぼんやりした、大柄ではあるがマッチョではない、どこか優しさを感じるキャラクターである。
ハリウッドでリメイクという話があるようだが、これをそのままミステリー映画にしたら、たぶん「ディパーテッド」の二の舞になるだろう。
つまり、この映画が(私にとって)よかったのは、スウェーデン映画だからに他ならない。ストーリーやプロットにこれといった新鮮があるわけではないし、描き方に奥深い何かを感じるわけでもない。もちろん、展開に起伏はあるが、ある種、物事は淡々と静かに進行していく。ハリウッドなら、こんなにさらりと流しはしないだろう。
テンポに力点を置いているのか、説明的なカットやセリフが少ないのだ。たとえば、リスベットがハッカーとしてどれほどすごいのか、なぜハッカーなのか、押しつけがましく描こうとはしない。ミカエルの私生活など全く話題にも上らない。
それがいいのだ。そして、だからこそそれだけと言える。
なお、これから観られる方は、会場が明るくなるまで席を立たない方がいい。