- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2011/08/03
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すばらしい映画でした。ただ、1点、いや2点かな、をおいて。
その、1,2点は後回しにして、何がすばらしいかというと、全てが融合したその統一感、映像、音楽、俳優、ストーリー、編集、そして、照明も音効も、それら全てが監督のイメージの元に融合されています。
映画は、「春の祭典」のパリ初演シーンから始まりますが、これから始まる2時間の基本トーンを見事に作り出し、見るものをその中に引き込みます。その後続く、張り詰めた空気は、一級のサスペンスにも匹敵する緊張感を生み出し、この映画が単にシャネルやストラヴィンスキーという人物を描こうとしているのではなく、ましてやその伝記映画ではなく、人間そのものをスクリーンに映し出していくのです。
もちろん映画は劇場で観るものですが、DVDにもいいところはあります。メイキングなどの特典が入っていることです。インタビューに答えるヤン・クーネン監督の言葉が、全てを語っています。
「映画における基本言語は、まず映像だ。映像自身が語る。それから、音、音のカテゴリーに含まれるものは、セリフ、音楽、効果音、バックグラウンドの音、一つのショットの中で音と動きが合わさり、撮影手法のディテールが加わり、視線一つで感情を伝えることが可能になる。観客に詩的なものを伝えたい。」
で、そんなすばらしい映画の何が気に入らないのか? それはラストにやってきます。
二人の関係も終わり、シャネルの援助で実現する「春の祭典」の再演がラストシーンになるのですが、そこに老いたシャネルとストラヴィンスキーのカットが幾度か挿入されるんです。ヤン・クーネン監督は何をしようとしたんですかね? 何を最後になって怯んだんでしょうか? 「詩的」なものを伝えたかったんじゃないんでしょうか? 二人が死ぬまで想い合っていたと伝えたかったんでしょうか? たとえそうだとしても、この映画においては、そんなことはどうでもいいことのように思いますが…。
そして、極めつけが、エンドロールも終わり、本当にラストのラスト、劇場では席を立つ人もいますので、見ていない人も多いでしょう。
男が一人椅子に座っています。カメラサイドからシャネルが近づき、隣に座り、二人は見つめ合い、触れ合おうとし、そして、カメラはパンし、サイドテーブルにはストラヴィンスキーの写真が飾られています。
見ていない人にはよく分からないかも知れませんが、それに見ていない人はここまで読み進まれないと思いますが、シャネルが生涯最も愛したといわれるアーサー・エドワード・”ボーイ”・カペルの写真のシーンが前半にあり、その写真をシャネルが伏せることでストラヴィンスキーとの関係が始まるといった描写があるのです。
やはり、ヤン・クーネン監督も「悪魔のささやき」には勝てませんでした。
もっといろいろ、アナ・ムグラリスやマッツ・ミケルセンのことを書きたかったのに、何だか気持ちが萎えてしまいました。
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