今日も、あいち国際女性映画祭で「映画の肖像 黒澤明 大林宣彦 映画的対話」を観てきました。いわゆるメイキングもので、大林宣彦監督が、20年前に黒澤明監督の「夢」の撮影現場を撮ったものです。どうせメイキングだろうと高をくくって観にいったのですが、とんでもなかったです。
やはり、ちゃんとした(?)監督が撮ったものは、たとえメイキングでも違いますね。撮ろうとしているものが、はっきりと観客に伝わってきます。編集もうまいです(プロに失礼)。
映像は、大林監督の娘さん(大林千茱萸さんのことでしょうか?)がホームビデオで撮ったものに、「夢」のほんの一部とインタビュー、それに少しスチールがあったでしょうか、それらを構成したもので、確かに画質は良くないのですが、それが気になることは、ほとんどありませんでした。
で、大林監督自身も、終了後のゲストトークで語っていましたが、この映画(と言ってもいいでしょう)は、徹底的にやさしい「黒澤明」を撮っています。黒澤天皇といわれ、時にそのワンマンぶりが話題になったりした、怒鳴ったりする姿は一シーンもありません。
絵コンテを描いて優しくスタッフにイメージを説明する姿、望みの自然光をじっと待つ姿、笑顔を交えて俳優を演出する姿、そして、クランクアップし、俳優、スタッフのみならずエキストラの人たちひとりひとりと「ありがとう」「ありがとう」と言って手を握りあう姿、時に歯さえも見せる黒澤明は、実に新鮮でした。
メイキングとしても、よくDVDに特典で入っているものとは一線を画し、かなり良くできており、150分という、その手のものにしては信じられない長さも全く苦になりませんでした。特に、私は、ゴッホを演じたマーティン・スコセッシのシーンなどは、とても興味深く観ました。
やはり、もの創りの現場は、時に怒鳴りあい、けんかしあったとしても、そのベースに人間としても優しさと信頼関係がなければ、決して良いものは創れないのだと強く感じました。