田中さんはラジオ体操をしない/マリー・デロフスキー監督

を見て、「ブライアンと仲間たち」を思い出す

約30年にわたり会社の不当解雇に対し抗議活動を続けている男性を追い、山形国際ドキュメンタリー映画祭2009など世界各地の映画祭で話題を呼んだドキュメンタリー。ラジオ体操を拒否したことがきっかけで1981年に大手電機会社を解雇されて以来、毎朝会社の門前で権力を批判する歌を歌い続けてきた田中哲朗氏の活動を、オーストラリアの女性監督マリー・デロフスキーが映し出す。(cinematoday

大手電機会社とは沖電気なんですが、さすがにラジオ体操を拒否しただけでは解雇はできず、直接の理由は異動を拒否したからのようです。当然、解雇するための理由作りの異動命令でしょう。

私自身は、こういった大企業の体質とか労務管理を味わったことが全くないのでよくわかりませんが、多分、沖電気だけではなく、どこでも同じようなものだと思います。ひどいことだと思いますが、資本主義を選択している以上避けられない(田中さんに対してということではなく、解雇そのものが)ことですし、それに対するには闘うしかないとは思います。

などと、他人事だから言えるわけですが、それにしても、田中さんという方はすごい人ですね。そのすごさに敬服しながら、ある映画を思い出しました。

ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1

もう亡くなられましたが、英米のイラク戦争に反対して、ロンドンの国会議事堂前でテント生活をしながら反戦の抗議活動をし続けたブライアン・ホウさんとサポーターたちを追い続けたドキュメンタリーです。早川由美子監督の初めての作品で、「2009年度日本ジャーナリスト会議(JCJ)黒田清・JCJ新人賞」を受賞しています。

共にドキュメンタリーですし、被写体のエネルギッシュさやキャラクターの強さもよく似ています。サポーター(支援者)がいることも同じですし、監督が撮り始めたそもそもの発端もよく似ています。

ただ、結果(作品)をみる限り、決定的に違うことがあります。早川由美子監督は、ブライアン・ホウさんとは一体何なのかを本当に知りたいと思っているようですが、マリー・デロフスキー監督は、理解できない田中さんをただ眺めているように見えます。