瞳は静かに/ダニエル・ブスタマンテ監督

アルゼンチン映画(スペイン語圏映画って言うべきでした)って妙に波長が合います「グッド・ハーブ」「瞳の奥の秘密」「ルイーサ」など

fb連携がうまくいかない原因判明。タイトルが長すぎるのですね。
元のタイトルには、「今夜、列車は走る」「娼婦と鯨」「僕と未来とブエノスアイレス」も入っていました。

時々「子どもの視点」で描いた映画といったものがありますが、なるほどと思えるものに出会うことはあまりなく、そりゃ難しいよねなどと思っていましたが、この映画はその点においては、かなりいい線いっています。

それだけに、確かに子供のころって世の中や大人たちはこんな風に見えていたなあと納得できる反面、何が起きているのかが分かる大人たちの映像が断片的にしか示されず、事前情報ゼロで見ますと、なかなかストーリー的なものをつかむのが大変です。

何となく世の中には不穏な空気が流れており、主役の8歳の男の子アンドレス(コンラッド・バレンスエラ)は、ふと目を覚ました夜中に家の外で繰り広げられる大人たちの争い(たぶん軍政の弾圧行為)を目にしたりします。そうした細かな描写から何となく大人たちの緊迫感やぎすぎす感は伝わってくるのですが、そもそもそうした歴史的事実を描くことを本筋としているわけではありません。

アルゼンチンといえば、チェとかエビータとかが浮かんできますが、歴史となるとフォークランド紛争くらいしか思い浮かばず、時代背景をつかむのに苦労しました。

話は変わりますが、マドンナとバンデラスのエビータ良かったですね。見た環境が飛行機の中で公開前に見たこともあり、はっきり覚えています。感動してぽろぽろ涙を流しながら見ました(笑)。

で、時代背景ですが、1976年に成立した軍事政権というのは反体制派に相当ひどい弾圧をしたらしく、公式サイトによると「3万人余りの若者たち(その大半が、14歳から26歳)が、強制連行、拷問、殺害などで行方不明にな」り、「軍事政権に加担した容疑者たちの裁判は、今もつづいている」とのことです。

そうした中で、アンドレスは母親と兄と暮らしているのですが、母親の突然の死によって、2人は父親と祖母と暮らすことになります。この父親と祖母の描き方が、アンドレスの見た目で象徴的に描かれているあたりもかなり面白く、さらに母親が生前に恋人らしき反体制派の男から何かを預かっているのですが、この男が結構ちょろちょろと出てくるあたりも、ああ確かにこういう風によく分からないけど記憶に残る人間やものってのがあるなあなどと妙に納得できたりします。

といった感じで、四季をめぐる一年がアンドレスの目線で描かれ、最後には何とも恐ろしくも奇妙なシーンがやってきます。まあこれは見てください。

何ともとらえにくい映画ではありますが、一見の価値はあると思います。

それにしても、あらためて思いかえしてみますと、アルゼンチンの映画って、妙に波長が合う感じがします。「グッド・ハーブ」「瞳の奥の秘密」「ルイーサ」「今夜、列車は走る」「娼婦と鯨(DVDスルーだと思いますがこれ結構良かったです)」「僕と未来とブエノスアイレス」、みな結構記憶に残っています。
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