フロイトとユングと、そしてザビーナ・シュピールラインという女性の話ですが…
何となくクローネンバーグ監督の名前で見に行ったんですが、結構知的(?)好奇心をくすぐられるまあまあよい映画ではありました。その後目にしたキネ旬最新号の巻頭も飾っていましたので、注目映画だったんだとややびっくりです。
フロイトとユングと、そしてザビーナ・シュピールラインという女性の話ですが、ザビーナさんって全く知りませんでした。ホント歴史ってのも男性視点で書かれていますね。れっきとした精神分析医なのに「ユングの愛人」としてしか認知されなかったりってのはどうなんでしょう?
映画は、およそ10年間くらいでしょうか、ユングとザビーナの出会いから別れまでが描かれています。ただ、その時間経過を感じさせるほどの変化が俳優にあまり感じられず、何回か出る「2年後」といったテロップがなければ、1,2年の話と勘違いしてしまいそうです。それに最初の出会いがザビーヌ18,9歳ですから、さすがにキーラ・ナイトレイ、無理でしょう(笑)。と思って調べてみたら、まだ27歳なんですね。
元来、会話劇は結構好きな方ですから、こういったものに興味を持ち、たとえば今回なら「ザビーナ・シュピールラインの悲劇」なんて本を読んでみようと話がふくらんでいきますので何ら文句はないのですが、正直映画としては、3人の人間関係への突っ込みに物足りなさが感じられます。まあ、3人それぞれキャラクターはしっかり作り込まれていますが、なんて言うんでしょう、人物像が平坦なんですよね。あるいは生活感がないというか、特にキーラ・ナイトレイは「演じてる」って感じが強く、あんたザビーナじゃなくてキーラでしょ、なんて言いたくなってしまいます(笑)。同じくマイケル・ファスベンダーも普通っぽくてもうひとつでしたね。
多分、二人とも清潔っぽ過ぎるんですよ。愛人関係にも「危険なメソッド」というほどの危うさが感じられなく、SM的なシーン(なぜかは見てくださいね)もあったりするんですが、何だか本当に折檻しているみたいにしか見えませんし、クローネンバーグ監督ってこんなんでしたっけ?
何だか、良い映画だったと書こうと書き始めたのが良からぬ方向へ行ってしまいました(笑)。
良かったのは、そこそこ丁寧に作られていることと最初に書いたように知的好奇心がくすぐられること、ああそれと、ヴァンサン・カッセルが、ユングに対してサビーヌを患者としてではなく個人的感情(愛情?)の対象にさせるための役回りで出てくるのですが、扱いが中途半端で狂言回し的なわりに結構存在感があってよかったです。ストーリー的には、えっ、どこ行っちゃったの?って感じでいなくなるんですが(笑)。
いずれにしても「ザビーナ・シュピールラインの悲劇 ユングとフロイト、スターリンとヒトラーのはざまで 」を読んでみよう。