マリーゴールドホテルで会いましょう/ジョン・マッデン監督

全く予想を裏切ることもなく安心して見ていられるというのは、これもまた映画のひとつの有り様

グランドホテル・スタイルの王道をいっています。さらにそれをシンプルに、それほど深く個々人にこだわらず、人物配置も極めて単純化されています。

判事を引退したグレアム(トム・ウィルキンソン)は知性を代表しリーダー役、ただ彼に自分がゲイであることを自然な形でカミングアウトさせているのは、時代を反映しているのかも知れません。リーダーといってもぐいぐい引っ張っていくマッチョ系ではない分、ジュディ・デンチ演じる聡明なイヴリンがそれを補っています。

トラブルを起こす役回りは、ダグラス(ビル・ナイ)とジーン(ペネロープ・ウィルトン)夫妻、多分お互い押さえに押さえてやっと平穏な老後をというところまで来たのでしょう。いずれ壊れるだろうとにおわせています。そしてもう一人、(人種)差別主義者のミュリエル(マギー・スミス)です。

マッジ(セリア・イムリー)は、いわゆる恋多き女性、バーで金持ち男性を物色したりします。その男版がノーマン(ロナルド・ピックアップ)なのですが、もちろん二人がくっつくことはありません。この二人はコメディ色の担当ですし、色恋といってもその展開はほとんどゲームのようです。

以上7人が、インドでの自由気ままな老後を求めて「マリーゴールドホテル」へ。ところが着いた先は、ほこりは舞うわ、部屋から鳥は飛び立つわの、ほとんど休眠状態のホテル。支配人は亡き父から受け継いだホテルをなんとか立て直そうと頑張ってはいますが、資金不足と母親の反対でうまくいかず、ネット上に誇大広告を出して宿泊客を集めたわけです。若き支配人のソニーは、スラムドッグ$ミリオネアのデヴ・パテルが演っています。

この後の展開は言わずもがなで、7人はインドの煩雑さにカルチャーショックを受けつつ、あれやこれや諍いもあり、笑いもあり、それでも最後はお決まりのほぼ全員めでたしめでたしのエンディングということになります。

全く予想を裏切ることもなく、安心して見ていられるというのは、これもまた映画のひとつの有り様ではあります。

それを裏付けるように、平日の昼間でしたが、いや、だからこそかも知れませんが、映画の内容と同世代の客で随分賑わっていました。