人間って弱気になれば同情もして欲しくなるものなのに…ミヒャエル・ハネケ監督、相変わらず素っ気ないです。え?そのシーン、そこで切る?みたいなことなんですが…。
ですから、「愛、アムール」なんて日本語タイトルから感じられるような甘さなど全くありません。老夫婦の介護と最期を描いているわけですから、どうしたって甘く楽しい話になりようがないのですが、逆に言えば、眼にみえる愛(この言い回しも変ですが)など描こうとしない分、フィルターもかからず見やすいものになっているように思います。
それにしても二人とも強い人ですね。ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リバ)なんですが、普通人間は弱気になれば同情もして欲しくなるものですし、優しい言葉をかけられればさらに弱気になるものだと思いますが、この二人、全くそういったところがなく、個人のアイデンティティが崩れることなど一切ありません。人間の尊厳というよりも、二人の生き様そのものということなんでしょうか…。この二人であれば、あの結末は当然という感じです。
現代にあってはさほど特異なテーマではありませんし、むしろ日本では現実の方がもっと先に行っているような感じさえしますので、映画としてはそれほど印象は強くないのですが、このテーマをこれだけ冷めたタッチで描けるのはミヒャエル・ハネケ監督くらいではと思います。