なぜか一日コーヒーを飲み損ねる男の行く末が気になっていたのですが、意外にも、結構シリアスでしんみり…
予告で見た、なぜか一日コーヒーを飲み損ねる男の行く末が気になっていたのですが、意外にも、結構シリアスでしんみりしてしまいました。
冒頭のシーン、やや仰角気味でとらえたニコ(トム・シリング)と恋人(?)のシルエット映像、構図もいいですし、とても良かったです。モノクロが成功していますね。写真のように(言い回しが変)シャープなベルリンの街も美しかったです。
2年前に大学を辞めたことを父に秘密にしたまま、“考える”日々を送っている青年ニコ。恋人の家でコーヒーを飲みそこねた朝、車の免許が停止になった。アパートでは上階に住むオヤジに絡まれ、気分直しに親友マッツェと出かけることに。すると、クサい芝居の売れっ子俳優、ニコに片想いしていた同級生ユリカ、ナチス政権下を生き抜いた老人等々、ニコの行く先々でひとクセある人たちが次々と現れる。果たして、ニコのツイてない1日の幕切れは──? (公式サイト)
ニコは様々な理由でコーヒーにありつけません。朝、恋人にふられて飲みそこね、カフェではお金が足らず、レストランではマシーンが故障、父親との席では酒にしようとお預け、さらに病院の自販機は故障と、行く先々でコーヒーに嫌われ続けます。
前半は、そうしたコメディタッチのクスッと笑える映画なのかと(まあそれはそうなんですが)見ていましたが、同級生のユリカとの会話だったと思いますが、突然ニコは「違和感を感じている」ともらします。
そこで、音楽のせいもあるのでしょうが、何となく全体を支配しているブルージーなトーンも、ニコの物憂げな表情も、全て合点がいきます。さらには、コーヒーにさえ受け入れられないニコなのだということも。
こうした展開にあざとさがないのが素晴らしいです。洗練されています。マッツェと一緒に訪ねた友人の家でのおばあちゃんとのやりとり、結局おばあちゃんの素敵な椅子で眠ってしまうところなど、センスの良さがうかがえます。
そして、その日最後に寄ったバーでもコーヒーを頼もうとしますがマシーンを片付けたと言われ、そこでナチス政権下を生きた老人にからまれつつ話を聞くことになります。老人の話の内容がもうひとつどういう情景なのか理解できなかったのが残念ですが、ニコは何かを感じたのか耳を傾けています。
ひとしきり喋った老人は店を出た直後に倒れ、ニコが病院まで付き添うことになります。次の朝、病院のソファーで目覚めたニコは、老人が亡くなったと聞かされます。
そして、やっと一杯のコーヒーにありつくニコ、このカットもまたおしゃれです。
いい映画でした。