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ほとりの朔子/深田晃司監督

ホン・サンスが韓国のロメールなら、深田晃司は日本のロメールというところでしょうか

2014/04/04

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ホン・サンスが韓国のロメールなら、深田晃司は日本のロメールというところでしょうか。それだけに、この映画、どこか既視感が強い印象です。それぞれ文化的背景は違いますが、馬鹿な大人(大人の持つ愚かさ、浅はかさ、幼さ…)をうまく描くところは共通しています。


『ほとりの朔子』予告編

大学受験に失敗し、やや落ち込み気味の朔子(二階堂ふみ)は、叔母海希江(鶴田真由)と一緒に、母の故郷の海辺の町にやってきます。その町にはもう一人の叔母(渡辺真起子)が暮らしているのですが、その叔母は、なぜそういう設定なのかよく分かりませんが、入れ違いに海外へ旅立ってしまいます。二人の叔母と朔子の母は、親が共に子持ちでの再婚であり、血のつながりはありません。

このやや複雑な関係は、何だか考えに考え抜いた設定のような気がして、逆に気になりますが、それはともかく、さらにその町には、海希江の幼なじみの兎吉(古舘寛治)がいます。彼は、過去に海希江と恋愛関係があったようだとも語られ、町の人々からはチンピラ(そうは見えないが…)と陰口をたたかれている人物で、現在は偽装ラブホテルを経営(だったかな?)しています。そうした兎吉を、その仕事からなのか、そもそもの性格からなのか、嫌っている(らしいが、それほどでもない)大学生の娘辰子(杉野希妃)がいます。

この辰子を演じている杉野さんというのが、この映画のプロデューサーでもあるらしく、そのせいか、結構押し出しの強い演技をしています。海希江の今の恋人(確か不倫)である西田(大竹直)が、これまたどういう経緯かよく分かりませんが、夏休みなのに辰子の大学へ講義にやってきます。二人の出会いからすでに予感はさせるのですが、講義の後、西田は魂胆丸出しで辰子を誘い、二人はあっさり関係を持ってしまいます(多分)。

こうした馬鹿げた大人の恋愛遊び(の話題)が朔子の周りで繰り広げられます。海希江と兎吉の間にも、朔子と兎吉の甥である孝史(太賀)が初めて出会うシーンで何かあったようです。四人は(「海辺」ではなく)川辺に自転車で出掛けますが、朔子と孝史と別々の行動をとった二人は、待ち合わせ場所になかなかやってこず、後に朔子に「何していたの?」とツッコまれています。また、辰子を誘った西田は、実は海希江に会いにこの町に来たようで、台所での二人の痴話話的カットもあり、極めつけが、辰子の誕生パーティーで繰り広げられる、海希江、兎吉、辰子、西田の下品な大人トークです。下ネタという意味ではなく、やたら人の心の中を覗こうとする下品さです。

もうひとつ、大人の馬鹿さ加減を強調したシーンがありました。兎吉の経営する偽装ラブホテルに、中小企業の社長のようなキャラの男が若い女を連れ込むのですが、ロビーで待つ女のカットにしても、必ず流さなくてはいけないムードミュージックにしても、ベッドシーンにしても、相当にギャグってつくってありました。

で、結局、この映画は、そうした大人たちの中の朔子、今だ居場所をみつけられない揺れる18歳を描こうとしているのでしょう。

孝史につきあう形で家出をした二人は、廃線となった線路を歩いています。そうした自分たちを、朔子は映画のようだと主題曲を口ずさみ(スタンド・バイ・ミー)、孝史は孝史で何か映画を思いだした(成瀬巳喜男監督「秋立ちぬ」らしい)と言います。

このあたりが私にはよく分からないところですが、深田監督の照れなんでしょうか? 手法なんでしょうか? オマージュとも言えず、もちろんパロディではないですし、ましてや18歳の台詞ではなく深田監督自身の台詞ですよね。

それはともかく、その一夜を経て、朔子は何かを得たらしく、東京へ帰っていきます。ただ、正直、ラストあたりは、なぜかかなりぼんやりしていて、何があって朔子は戻ることにしたのか、それに、海希江が兎吉に向かって「とにかく産んだんだから」って言っていましたが、あれは辰子が海希江の子供だということなのか、ちょっとばかり集中力を切らしていたのか、よく覚えていません。

「ヒミズ」でも印象はよかったのですが、二階堂ふみがいいですね。

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