荒野の千鳥足/テッド・コッチェフ監督

ビール!ビール!ビール!よりもカンガルーの虐殺が気になるということは2014年に生きているということでしょうか

荒野の千鳥足≪痛飲エディション≫ [Blu-ray]

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マーティン・スコセッシ監督が「すさまじいほどに不快な映画」と言ったとか言わないとか。うまい宣伝です。随分前にこの話題をネットで見かけて気になっていたのですが、気がつけば名古屋での公開が四日間のみという、あやうく見逃すところでした。


『荒野の千鳥足』映画オリジナル予告編

期待ほどの「不快さ」はありませんでしたが、まあ面白い映画でした。

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ただし、現代映画に多いエログロ描写は皆無ですので、そこらへんを期待すると肩すかしを喰らうこと間違いなし。またタイトルから連想しがちなコメディ要素や西部劇的要素も皆無です。くれぐれも観終わったあとに「つい魔が差した」と思わなくて済むよう鑑賞の際には熟考の上で劇場に足を運ばれることをおすすめします。

とありますが、エログロは期待していないまでも、またコメディではないだろうと分かっているとはいえ、70年代的フィルターをかければやや物足りなさを感じ、また2014年の今から見ればおおらかささえ感じられます。「Take it easy」の国オーストラリア産ということもあるのでしょうか。と思っていたら、テッド・コッチェフ監督はブルガリア系のカナダ人でした。

結局、ジョン・グラント(ゲイリー・ボンド)がどんなに堕ちても破滅まではいかず、一夜の夢の如く終わってしまうといったところは、70年前後の時代の波に乗れていなかったということなのでしょう。だからこそ今再評価されるのだとは思いますし、ある意味、時代を先取りしていたのかも知れません。

ということで、一番印象に残ったのは、そうした酒やギャンブルに身を持ち崩す人間の弱さみたいなところよりも、カンガルーを追い回して何頭(?)も殺すシーン、映画では狩りに行くといっていましたが、これにはドキッとするくらいの迫力、というか、どうやって撮っているのだ!?という疑問符もあって、かなり驚きました。

エンドロールにもクレジットされていましたが、プロのハンターによるカンガルー狩りの映像と映画として撮った映像を編集したんだそうです。ってことは本当にカンガルーを殺しているってことで、普通、こうしたクレジットは実際には殺していないよっていう内容なんですが、これは実際に殺しているよってことです。

で、ウィキによると、現在は「オーストラリア政府は、政府機関による生息数調査を実施し、カンガルーの捕獲頭数に年間の規制枠を定めている」ということのようであり、1971年当時がどうであったかははっきりしませんが、いずれにしても、この映画のシーンもプロのハンターを雇って実際に殺すところを撮ったということになります。