ワンカットごとの構図がきれい。ラストカットも秀逸!いいわ、これ。
昨年公開された「イブ・サンローラン/ジャリル・レスペール監督」とほぼ同時期に製作されているんですね。日本での公開も同時にすれば相乗効果でより入ったのではないかと思います。まあ誰もが考えることですので、そうならなかった何か訳でもあるんでしょう。
ただ、そちらの方は見ていませんので比べて何か書くことはできませんが、こちらの「サンローラン」、全編不思議な緊張感が漂っていてとても良かったです。
1970年代半ば、世界で最も有名なデザイナーの〈死亡説〉が流れた。〈モードの帝王〉としてファッション界に君臨していた、イヴ・サンローランだ。(略)まだ若く絶頂期だったはずの彼に何があったのか──そこには、華麗な成功の裏に隠された、命を削るほどの創造の苦しみとスランプ、心を打ち砕くほどの激しい愛の葛藤があった。(略)“モンドリアン・ルック”や“ポップアート”コレクションで大ブレイクした後の激動の10年間を描く(略)。(公式サイト)
緊張感の訳は、ただただギャスパー・ウリエルの演技です。
手足の動きからまばたきや視線の持っていき方まで、すべての動きが演技されていました。全く無駄がありません。
普通はそうした作られた感は好みではないのですが、この映画ではその演技している感が、サンローラン自身がサンローランを演じている、つまり映画の中で本人が語っているように「自分が作った怪物と生きなくては…」という、伝説となった者にしか分からない苦悩に転化しており、全編ピリピリ感に満ちていました。
ギャスパー・ウリエルさん、ググってみましたら何本か見ているようですがあまり記憶にありません。それに画像を見ても、この映画ほど良さは感じられません(スミマセン)。この映画では美しいです。
サンローランの恋人役でルイ・ガレルさんが出ていましたが、ディスコ(クラブ?)での登場シーンは、誰だこのスケベそうなドンファンは?と思っていましたら、口ひげ姿のルイ・ガレルでした(笑)。
さらにジェレミー・レニエ? すごい老けメイクで出ていました。すごいなあ、この映画の出演者たち!
そうそう、公式サイトを見ていましたらレア・セドゥさんの名前があり、え?出ていた?と全く気づきませんでした。もともと印象の強い人ではありませんが、映画の中でもあまり生きていませんでしたね。
映画は、ギャスパー・ウリエルを見ているだけでも充分持ちますし、ん?何だこれ?みたいなところがあったり、やや乱暴に感じられなくもない編集も、見終わってみれば結構良かったんじゃないのと思えます。
事前に公式サイトの年代ごとのストーリー程度は頭に入れておいたほうがより集中できるかなとは思います。
ベルトラン・ボネロ監督の映画は初めてです。
ややメリハリに欠ける印象もありますが、成功も挫折も、恋も失恋も、華麗さも退廃さも、過剰なところがなくすべてほどよく仕上がっていると思います。
実はこの映画を見ようと思ったのでは、このウィキ( ベルトラン・ボネロ – Wikipedia )の顔写真を見たからです(笑)。なんだか魅力的じゃないですか!
旧作を見てみようと思いましたら DVD は一作しか出ていないんですね。
それに機会があれば「イブ・サンローラン/ジャリル・レスペール監督」も見てみましょう。