女性監督の描くセックスシーンはやたら生々しくエロいような気がするのですが…
相変わらず、と言っても「百万円と苦虫女」しか見ていないのですが、ステレオタイプな人物や群像でドラマづくりをする監督ですね。
「百万円…」では、それが相当鼻についてうんざりしたものですが、この映画は、構成がしっかりしているせいか、何とか興味を失わず最後までいけました。
里美(田畑智子)の母親、確かに孫の顔をみたい親はいるんでしょう。常識知らずなバカな教師もいるんでしょう。貧困層が住む団地なんてのも確かにあるのでしょう。他人の過ちに対して、その家のドアにトンデモ落書きをする善良ぶった世間も確かに存在するのでしょう。金持ちの息子で勉強も出来るのにゆがんだ性癖を持った人間もいるでしょう。
ただ、そうした固定化された概念を、ここまで過度に強調して、主たる人物の周りをかためるというのは、ちょっとばかりいただけません。
そんなことしなくたって、主な人物たち、里美(田畑智子)や卓巳(永山絢斗)や良太(窪田正孝)や卓巳の母(原田美枝子)の存在感でもつでしょう。
などと、「百万円…」と同じようなイライラ感をもったのですが、ふと考えてみると、タナダユキ監督は、ある意味、誠実な人物や生き方に共感を持ちながらも、どこかそのことが気恥ずかしいのかも知れないですね。
主たる登場人物は皆まじめです。それぞれ真剣に悩みますし極めて真っ当です。そのリアリティさへの照れのようなものが、まわりの人物や群像を過剰にステレオタイプに描かせ、バランスをとろうとしているのかも知れません。
考えてみれば「百万円…」もそうでした。あまりはっきり記憶していませんが、蒼井優が演っていた女は、言うなれば自分探しの旅に出たんだと思いますが、これって正面切って言うのは結構恥ずかしいことなのに、田舎の人々や海の家の男とか、過剰にステレオタイプ化された周りの人物像でリアルさが打ち消されていたように思います。
私の趣味ではありませんが、これも持ち味のひとつなのでしょう。
ところで、「百万円…」に比べて、この映画の構成がしっかりしていると感じられたのは、向井康介のシナリオにあるのではと想像します。ただ、映画の出来としては、相変わらず冗長ですし、編集がうまくないのではと思いますが…。