四十九日のレシピ/タナダユキ監督

俳優でもっている映画、石橋蓮司、淡路恵子、二階堂ふみがいいです。相変わらず演出は過剰。見ようと思いリストアップしてあるDVD(Blu-ray)がなかなか消化できません。そのひとつ、タナダユキ監督の「四十九日のレシピ」です。

この監督の作品は、「百万円と苦虫女」「ふがいない僕は空を見た」と、見た二本とも苦手な印象しか残っていないのですが、でもなぜか次の作品も見ようと思ってしまうという何とも不思議な監督です。

ひょっとして自分では気づかないけれど、こういうドラマドラマした映画が好きなのかも知れません(笑)。

母が遺したレシピに導かれ、母の人生を旅する、49日間の感動の物語。遺言は、「四十九日の大宴会」でした――。

誰の人生にも必ず訪れる、大切な人との永遠の別れ。けれども、熱田家の母・乙美は、あまりにも突然逝ってしまった。夫の良平(石橋蓮司)は何ひとつ感謝を­伝えられず、悩める娘百合子(永作博美)は女として今こそ聞きたいことがあったのに、­母はもう居ない。そんな折、熱田家に派手な服装の少女イモ(二階堂ふみ)と、日系ブラジル人の青年ハル­(岡田将生)が現れる。

こうして、母の遺したレシピにいざなわれ、娘と父、イモ、ハルの4人での”­四十九日の大宴会”までの奇妙な共同生活が始まるが――。(公式サイト

多分、劇場で見ていれば、イライラとしつつも、しばらく我慢しておとなしく見て、ああそういうことかと、イライラしたことも忘れてしまったのでしょうが、あいにくDVDですので、冒頭の10分ほどを二、三度見返してしまいました(笑)。

何かといいますと、まずひとつが、2シーン目ですか、熱田良平(石橋蓮司)が倒れているカットの暗闇から明るくなるテンポが異常に早くて、その不自然さに、死んでいるさまを象徴的にやっているのかと思って引っかかり、続いて、釣りに出かける良平と乙美のシーン、コロッケサンドのワンカット、イモ(二階堂ふみ)の登場をうまく整理できず、そうこうしているうちに「四十九日のレシピ」とタイトルが入り、続くは百合子の離婚届のカットからバスの百合子となり、その百合子が幼き頃の回想に入り、その回想では良平と乙美を違う若めの俳優が演じているという、何とも(私には)整理のつかない始まりだったのです。

良平の石橋蓮司はともかく、乙美は回想の1シーンくらいと写真なんですから、若い方の俳優さん(名前が特定できません)の老けメイクで演ればいいんじゃないのと思います。

でもまあ、その後は、石橋蓮司、永作博美、二階堂ふみ、淡路恵子の皆さんのうまさもあって見られる映画にはなっていました。こういうドラマドラマした映画はやっぱり俳優しだいですね。

淡路恵子さん、ちょうど一年前に亡くなられていますので遺作ということになるんでしょうか、最初に登場するシーンではすごい存在感を放っていました。ラスト近くの大宴会のシーンは演出が悪く、やや苦労してやっている感があり残念でしたが、それにしてもさすが肝が据わっている感じでした。

二階堂ふみさん、鼻から抜ける声のせいもあり、はまっていましたね。

日系ブラジル人のハル、岡田将生のキャスティングはちょっと白けます。日系の俳優さんっていないんでしょうかね?

ということで、俳優で持っている映画だと思いますが、それにしても相変わらずタナダユキ監督は過剰な演出をします。

百合子の夫の不倫相手の女性の傲慢な態度、イモとハルのつくられた過剰な陽気さ、四十九日の大宴会の過剰演出、そして何よりも百合子の夫をあっけなく許してしまうまとめかた、まあ原作があるわけで、それを知らずどうこう言っても仕方ないのですが、やっぱりこういう作られた感の強い映画は苦手です。

残念ながら、(宣伝コピーなんでしょうが)「乙美の人生を旅する」とあっても乙美の人物像は見えてこず、「人として女として本当の幸せとは何かに気づく」とあっても、ほぼ間違いなく百合子夫婦は同じことを繰り返すでしょう。