愛しき人生のつくりかた/ジャン=ポール・ルーヴ監督

いかにもフランス映画らしい、くすっと笑えて楽しく見られる映画です。

この映画を悪く言うことは、もちろんそんなつもりもありませんが(笑)、とても困難です。心に残る映画ではありませんが、気持よく見られますし、クスッと笑える、とてもいい映画です。

「フランスで100万人を動員したロングランヒット作!」だそうです。

確かに、実際のフランスは旅行者としてしか知りませんが、映画や本やさまざまなメディアによって作られたイメージで言えば、とても「フランスらしい」映画です。

パリに暮らす3世代の家族の人生を、時にコミカルに、時にリアルに描き出した、笑いと涙を誘う傑作。
シャルル・トレネの名曲「残されし恋には」にのせて、巨匠トリュフォー監督にささげたオマージュ。パリの下町と、クロード・モネの絵画で知られるノルマンディーの海沿いの町エトルタを舞台に、愛らしいエピソードを積み重ねた宝物のような映画。(公式サイト

ストーリーは、パリに暮らす家族の話で、もちろんフランスですから皆別々に暮らしているわけですが、おばあちゃんの夫が亡くなったために、心配した息子たちがおばあちゃんを老人ホームに入れます。気に入らないおばあちゃんは、皆に黙って生まれ故郷ノルマンディーの田舎町に旅をし、かわいがっている孫にだけそのことを知らせます。孫のロマンは、そこでおばあちゃんにサプライズを仕掛け喜ばせます。

といった話と平行して、息子夫婦の定年危機や孫の恋愛が描かれていきます。

「フランスらしい」とは書きましたが、考えて見れば、このストーリーなら日本映画でも成立しそうですね。

じゃあ、どこにフランスっぽさを感じるのかと言いますと、個人主義の国らしい対等な人間関係とか、いわゆるエスプリの効いた笑いとか、ちょっと軽めのシリアスさとか、そういったなかなか他では真似できないその国の文化みたいたものなんですが、特にこの映画では、脇の人たちのユニークな存在に違和感を感じないことです。

ロマンが働くホテルの主は、監督でもあるジャン=ポール・ルーブさんが演っているのですが、面接の場面なんてかなり面白いですし、ロマンの同居人も結構いろいろやってくれています。

中でも、ロマンがおばあちゃんに会いにノルマンディーへ向かう途中で寄るドライブイン(?)の店員の役回りがいかにもフランスという感じです。

ロマンは運命的な女性との出会いを求めているのですが、なかなか巡り会えず、たまたま寄ったそのドライブインで、商品を前に何を買うか決められずにいる時に、チョコバーを勧められ、その決断力(ちょっと違う)に感心し、どうすれば運命的な女性に出会えるか尋ねます。

店員は「待つのをやめれば24時間以内に出会える(だったかな?)」と答え、その通りになります。

さらに、ノルマンディーから父親(おばあちゃんの息子)と一緒にパリに戻る帰りにもそこに立ち寄り、今度は妻とギクシャクし始めた父親が「どうしたらいい?」と尋ねますと「現在がダメなら過去を思い出せ」とアドバイスします。

パリに戻った父親は、アドバイス通りに、若き頃、今は妻となった女性へ語った口説き文句を妻にささやき、関係を修復することに成功します。

こうした脇役を嫌味なく置けるのがいかにもフランス映画という感じがします。

ところで、その父親の口説き文句が「あなたは美しすぎる。二度と会いたくない。」と訳されていましたが、さすがにこれは興ざめでしょう。こんな口説き文句で男に惚れる女はいないでしょう(笑)。

まあそれはともかく、楽しく見られるとてもいい映画でした。