大人の恋愛映画というより、むしろ壊れることを恐れない若さあふれる男と女たちの恋愛映画
このしょうもない話(笑)をこれだけの映画にするってのは本物の巨匠です。
マジでです。
尾ひれがくどいことを除けば、まったくもってうまいですし、まったくもって面白いですし、現実と夢と妄想を見事に違和感なく融合させて、男と女 Un homme et une femme のありえそうでありえない、あるいはどこかにいるかもしれない男と女 Un + Une のある瞬間の冷めた熱情を軸に、大人なのか子どもなのかよく分からない男や女を描いています。
アントワーヌは、映画音楽作曲家として成功を収め、ボリウッド版『ロミオとジュリエット』のために訪れたニューデリーでフランス大使の妻アンナと出会う。二人はすぐさま意気投合し、つきない会話が始まる。アンナは愛する夫との間に子供を授かりたいと聖者アンマに会うための旅に出かける。アントワーヌも気分転換としばしの休息を求めて、アンナを追って旅に出る。(公式サイト)
この映画が面白いのは、男女間のあれやこれやよりも、インドの沐浴シーンやアンナやアントワーヌがアンマに抱かれるシーンの美しさであり、アンナとアントワーヌの途切れることのない会話のリズム(実は内容は何が面白いのか字幕ではよくわからない)であり、編集と構成のうまさ、たとえば、二人が話す言葉から一瞬にして過去のシーンに飛んでも違和感を感じさせないうまさであり、妄想や夢をあたかも現実であるかのように、あるいは現実をあたかも夢や妄想であるかのようにみせる、そのうまさにあると思います。
アンマは実在の人物ですが、あれはどうやって撮ったんでしょう? アンナやアントワーヌがうまく溶け込んでいたのがとても良かったですし、感動しました。
ただ、全般的にインドの描き方は古くからある、ヨーロッパから見た東洋イメージを抜け出ているわけではなく、でも、だからこそこういうツーリスト的映画が存在し得るわけで、今ではすでに逆もあり得る時代ですのでどうこう言う(誰も言っていない?)ことではないですね。
ということで、大人の恋愛映画というより、むしろ壊れることを恐れない若さあふれる男と女たちの恋愛映画でした。
「男と女」が見たくなりますね。