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アスファルト

再見。一枚一枚考え抜いて撮られたカットを丹念に積み上げた映画だからこそ持ち得る情感があります。

2016/10/06

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あまりの素晴らしさに、知らぬ間に再び劇場に足が向いていました(笑)。「アスファルト」再見です。

ところで、「再見」って、中国語にもあり、「さようなら」とか「またね」みたいな意味なんですね。See you again. と同じですね。

今回は夜7時くらいからの上映だったのですが、やっぱり…、あまり言わないほうがいいのかもしれませんが、客は少なかったです。

それもあってもう一度書こうと思ったわけで、下が初見の時の感想です。

ひとつ記憶違いがありました。シャルリ(ジュール・ベンシェトリ)が自転車で学校へ行く姿を後ろから追ったシーンのカメラは、肩越しではなく、地をはうようなあおりの角度で撮っていました。

撮影スタイルは、このシャルリくんを追う冒頭(に近い)のシーンと、ラストシーン、それまで登場人物6人が「何の音?」と気にしていた「音」の原因を追うシーンだけが移動で、その間の全編がフィックスだったと思います。意図的なパンやズームはなかったように思います。計算の上でのことでしょう。

画面サイズもスタンダードサイズに近く、若干横幅が広いくらいではないかと思います。これも何かを意図してのことでしょう。

人物を正面から撮ったカットが多いですので、ビスタや 16:9 など横幅が広いサイズですと人物に集中しなくなるからかも知れません。

それほどに人物の表情を大切にした映画です。また俳優たちもそれに耐えられる存在感があります。

このように、この映画、サミュエル・ベンシェトリ監督が、こういう映画を撮りたいと考えに考え抜いて作り上げた作品のような気がします。

余計なものがなく、足りないものも何ひとつなく、シンプルで、タイトで、ストイックで、それでいておしゃれで、なのに笑えるのです。とにかく、冴えた映画です。

次の写真の6人が主な人物ですが、こうした二人並んだ横顔のカットも特徴的です。


シャルリ(ジュール・ベンシェトリ)とジャンヌ・メイヤー(イザベル・ユペール)

言葉にしてしまえば、シャルリはジャンヌに「母」をみ、ジャンヌはシャルリに「昔の男」をみるということになるのでしょうが、この二人のやり取り(字幕なのでやや微妙)はむちゃくちゃ味があり、台詞もかなり練られているのだと思います。


スタンコヴィッチ(ギュスタブ・ケルバン)とバレリア・ブルーニ・テデスキ(看護師)

寂しさと人恋しさが愛情に変化するとき(笑)でしょうか。この二人の出会いのきっかけともなった住人たちをその後一切出さないというのも冴えてます。


マダム・ハミダ(タサディット・マンディ)とジョン・マッケンジー(マイケル・ピット)

この物語はとにかく笑わせてくれます。マイケル・ピットの情けない表情がむちゃくちゃいいです。宇宙の孤独を感じさせる表情です。

ということで、この映画はどんなにうまく書かれたレビューやあらすじを読んでも、その良さは伝わらないと思います。ハートウォーミングやビターなどといったありきたり(スマソ)のコピーには収まらない映画です。

一枚一枚考え抜いて撮られたカットを丹念に積み上げた映画だからこそ持ち得る情感がこの映画にはあります。

「マディソン郡の橋」、「2001年宇宙の旅」から「美しき青きドナウ」、「レースを編む女 La Dentellière」、「ネロ」の戯曲も何かからの引用かも知れません。ハミダが見ていたテレビドラマは何でしょう?

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