そんなには褒めないよ。映画評

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アスファルト

人生あれやこれやいろいろあってもまだまだ捨てたものじゃないと気持ちが和らぎます

2016/09/28

いやあー、今年のベストでしょう!!

おしゃれですし、シュールですし、切ないですし、ナンセンスですし、笑えますし、ほっこりしますし、映画として冴えていますし、完璧でしょう!

ですが、観客は私を含め3人でした(涙)。

団地の故障中のエレベーター。修理代を負担しない代わりにエレベーターの使用禁止を言い渡されてしったスタンコヴィッチ。
10代の少年シャルリは母親と二人暮らし。母親はいつも留守。ある日おとなりにおよそ似つかわしくない中年の女性が引っ越してくる。彼女はかつて活躍した女優ジャンヌ・メイヤー。
宇宙飛行士ジョン・マッケンシーは何の手違いか宇宙から団地の屋上に不時着。この事態を秘密にしたいNASAの要望でアルジェリア系移民のマダム・ハミダの家に2日間かくまわれることに。(公式サイト)

最初のカットがいいんですよ! 

フランスにもこういう、日本で言う公団のような団地があるんですね。廃墟好きですので、このカットでもう引き込まれてしまいます(笑)。

で、それに続く、その公団の住人のひとりシャルリ(ジュール・ベンシェトリ)が自分の部屋から自転車を階段で降ろし学校へ行くわけですが、その様子を肩越しのショットで追うシーン、これがまた私の趣味で(笑)、もうこの時点で、この映画は間違いないと確信しました。

さらに、このシャルリくんの物語のシーンでは、彼が学校から戻り、団地の玄関先で友人であり(多分)住人である二人の男が何をするでもなく壁に持たれているところへ彼が自転車持って中央に立ち、そのまま正面を向いて静止した状態がしばらくありますので、どうなんるんだろう?と思っていますと、大きな音楽を鳴らしながら車がやって来る音がし、そして去っていきます。音だけで車はそのカットに入ってきません。シャルリくんはそれを見届けた後、ふたりに「じゃあ」のような挨拶を残し団地の中に入っていきます。このシーンも最高です!

このジュール・ベンシェトリくん、その名の通り、監督の息子さんで、1998年生まれですから、この映画の時点で16,7歳くらいですがむちゃくちゃ存在感あります。これからどういう俳優になっていくのか楽しみです。

そのシャルリの相手となる売れなくなった俳優ジャンヌ・メイヤー役のイザベル・ユペールさん、もうこの方は説明するまでもないですね。たくさん見ていますが、私はミヒャエル・ハネケ監督の映画やホン・サンス監督の「3人のアンヌ」が印象に残っています。

この調子で書いていきますととんでもなく長くなりそうですし(笑)、どう書いてもこの映画の良さを伝えられそうもありませんので、とにかく見てください!ということで、簡潔にさわりを書いておきます。

引用したあらすじにある、団地の住人に起きる3つの物語は、それぞれが直接交錯することはありませんが、とにかくひとつひとつに味があり、うまく組み合わされて編集されていますのでひとつのまとまりある物語を見たような印象を持ちます。

「修理代を負担しない代わりにエレベーターの使用禁止を言い渡されてしったスタンコヴィッチ(ギュスタヴ・ケルヴァン)」は、ひょんなことから足を痛め車椅子生活となり、皆に見つからないようにエレベーターを使おうと昼夜逆転の生活となり、そのことで夜勤の看護師(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)との出会いが生まれ、紆余曲折あって、ほっこりする物語が生まれます。

シャルリとジャンヌ・メイヤーとの出会いは、年若いシャルリによって年配のジャンヌ・メイヤーが本当の自分自身に立ち返る物語を生み出します。

宇宙飛行士ジョン・マッケンシー(マイケル・ピット)とマダム・ハミダ(タサディット・マンディ)の物語は、シュールでナンセンスでとにかく笑えます。そして、何とも切なくなります。マイケル・ピットの表情がいいんです。

切なさはこの物語だけではなく全編漂っている空気なんですが、多分、それは、この映画が基本「孤独と癒やし」の映画だからなのだと思います。

感動ものでもありませんし、見終わっても何かはっきりしない感じを受けるかもしれませんが、人生あれやこれやいろいろあってへこたれそうになっても、まだまだ捨てたものじゃないと思える映画だと思います。

再見後のレビューが以下にあります。

ピアニスト (字幕版)

ピアニスト (字幕版)

  • イザベル・ユペール

Amazon

3人のアンヌ(字幕版)

3人のアンヌ(字幕版)

  • イザベル・ユペール

Amazon

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