俳優がすごい!タハール・ラヒム、オリビエ・グルメ、マチュー・アマルリック、そしてコンスタンス・ルソー!
ダゲレオタイプ?
知らない言葉だけに、何やらあやしいげな印象を受けます。というのは私だけ(笑)?
ただ、全然「あやしい」言葉ではなく、「銀板写真」のことでした。 フランス語タイトルは「La femme de la plaque argentique」で「銀板写真の女」といった意味らしいですので、邦題は、「ダゲレオタイプ」の言葉の印象をねらってつけられていますね。
監督:黒沢清
パリ郊外、古い路地に佇む屋敷。ジャンは、そこに住む気難しそうな写真家ステファンの助手として働きはじめた。ステファンは娘をモデルに、ダゲレオタイプという170年前の撮影方法を再現、露光時間の長い撮影のため、手、腰、頭と拘束器具で固定されていくマリー。ダゲレオタイプは生きているものの息遣いさえも銀板に閉じ込めるかのようだ。曖昧になっていく生と死の境界線。3人のいびつな関係は、やがてある出来事をきっかけに思いもよらぬ方向へと動き出す――。(公式サイト)
黒沢清監督というのは、ヨーロッパ、特にフランスで人気が高いという記事をよく目にしますが、すごい俳優たちで撮ったもんです。
私が見ている映画で言えば、「預言者」「パリ、ただよう花」「ある過去の行方」「消えた声が、その名を呼ぶ」のタハール・ラヒム、以下、長くなりそうですの簡潔に書きますとダルデンヌ兄弟監督のほとんどの作品に出ているオリビエ・グルメ、説明するまでもないマチュー・アマルリック、そしてですね、何と、マリーを演っているコンスタンス・ルソーは、ギヨーム・ブラック監督の「女っ気なし」のジュリエットではありませんか!
と、ひとり盛り上がってどうする?という話ですが、まあそれくらいすごい俳優さんたちです。
で、映画はと言えば、まあ他人のリズムをどうこう言っても始まりませんが、かったるいですね。2時間10分の映画ですが、2/3くらいにすれば面白く見られるのではないかと思います。
このシーン、いるの?というところも多いですし、編集もギクシャクしています。印象としては、迷いながら撮っているのではないか、と思うくらいです。
俳優もいいですし、せっかく海外で撮った映画ですから悪く言うのもなんですが、まず、「生きているものの息遣いさえも閉じ込める」というダゲレオタイプの扱いが中途半端で生きていません。マリーの等身大のダゲレオタイプのシーンがありましたが、もう少し何とかしてほしい感じの画でした。引き込まれるような神秘的な美しさを感じさせてほしかったです。せっかくモデルがコンスタンス・ルソーさんなんですから(笑)。
それに、ダゲレオタイプって、銀板にポジで定着するらしく、そのもの一枚しかないということになります。鑑賞も定着側からするらしく、左右反転したものを見ることになります。
そうした特徴を、何かうまく使えなかったんでしょうか?
ステファンはやや狂った感じのキャラですが、オリビエ・グルメさんがよく理解していませんね。人物像が一貫していません。一貫していないから狂ってるんでしょ、という意味の一貫ではなく、役柄に集中しているように見えないということです。亡霊に悩まされるステファンのシーンなんて、何これ?って感じです。
その点では、ジャンのタハール・ラヒムにも同じようなことが言えます。マリーへの愛情と執着がなくてこの映画は成り立たないように思いますが、何だか淡白な人物になっていました。
撮影期間(時間)が取れなかったんでしょうか、とにかく、映画がうまく流れていないです。せっかく(私好みの)俳優さんオンパレードの映画でしたが、残念な結果でした。