ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

エレン・ペイジのアップになるたびに涙が流れて…。もちろんジュリアン・ムーアもいいのですが。

あ~、最初から最後まで涙が止まりませんでした。1リットルくらい出たかもしれません(笑)。

ただ、単純に感動というわけではなく、とにかく細かいところでうまいんですよ。監督も、俳優も、もちろんジュリアン・ムーアもそうなんですが、ステイシーをやっているエレン・ペイジ、無茶苦茶いいです。

何かで見たような…、と思いながら見ていたんですが、「JUNO/ジュノ」も見ていませんし、初めての俳優さんでした。

監督:ピーター・ソレット

ニュージャージー州オーシャン郡。20年以上、警察官という仕事に打ち込んできた正義感の強い女性ローレルは、ある日ステイシーという若い女性と出会い、恋に落ちる。二人は、一緒に暮らし始め、穏やかで幸せな日々が続くはずだった…。しかしローレルは病に冒されてしまう。自分がいなくなった後もステイシーが家を売らずに暮らしていけるよう、遺族年金を遺そうとするローレル。しかし法的に同性同士に、それは認められていなかった。(公式サイト

物語は、同性愛カップルのローレル(ジュリアン・ムーア)がガンに冒され、パートナーであるステイシー(エレン・ペイジ)に、警察官として働いてきた遺族年金を遺したいと法的制約や社会的偏見に立ち向かい、勝利を勝ち取るというものです。

こう書きますと、よくあるベタな話やねと思われるでしょうが、基本ストーリーはそうであっても、ちょっとばかり違うんですよ。

ひとことで言ってしまうとバランスがとてもいいのです。

この映画の一番のポイントは、これまたちょっとベタな言葉を使いますが、二人のひたむきな愛であって、それが最初から最後までぴしっと通っているからこそ、同性愛への偏見や法的制約の壁に立ち向かったり、最初は冷たかった同僚警官たちが最後には協力的になったりするという、物語の定型パターンが抑制的に描かれることになり、また、かなり多めに登場する同性愛者支援団体の活動も、代表者をやっているスティーヴ・カレルのキャラクターもあって、比較的軽い印象になっています。

支援団体は、当然活動を全米にアピールしたいわけですから、二人を全面に押し出して「同性愛」という言葉にこだわるのですが、ローレルはあくまでも「equality(平等)のために」と讓らず、またそれに対する代表者の対応も印象に残らないくらいに軽く流され、つまり、このシーンがあればこその感動、しかしやりすぎてはマイナスという、実にうまいバランスで描かれています。相当計算されているように思います。

同僚の刑事デーンをやっているマイケル・シャノンもいいですね。長い間信頼しあってきた同僚なんですが、ローレルが同性愛者であることを知らず、密かに愛情を感じている役回りで、あの強面が効いて、映画に安心感を与えています。

デーンは、二人が購入した住まいを訪ねる場面で初めてローレルとステイシーの関係を知るわけですが、逆に、ステイシーは、デーンはローレルに気があるとずばり見抜き、ああそうなんだと明確にしてくれつつ、その後のデーンの立ち位置やステイシーとのややギクシャク感、そしてローレルが亡くなった後にステイシーの肩にそっと手を置くカットへと続いていきます。うまいです。

で、エレン・ペイジ、この映画のプロデューサーとしてもクレジットされており、また同性愛であることをカミングアウトしているとのことで、思い入れも強いのかも知れません。

上目遣いの涙目、眉間に力の入った垂れ目顔、額のシワ、エレン・ページのアップになるたびに涙がこぼれます。何なんでしょう(笑)。

何か強い力を感じたのでしょう。

不安を抱えているのに自信たっぷりな、不器用なのに押しの強さを持っている、そうした正反対のキャラクターが内在した人物をうまく演じて、というより、かなり入り込んでいる印象でした。

エレン・ペイジ、いいです!

とてもていねいにバランスよく作られた、もちろん感動できる映画です。

ところで、この映画、Based on a true story となっており、2008年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を受賞している映画が元となっているそうです。2008年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で上映されたようです。