すべての意味で踏み込みが足りなく中途半端
言うまでもなく、 今年2017年のアカデミー賞作品賞受賞作です。
公式サイトによりますと、戯曲「In Moonlight Black Boys Look Blue(月の光の下で、美しいブルーに輝く)」が原案となっているらしく、タイトルはそこから取られているんですね。
また、製作はブラッド・ピットのプランBエンターテインメントとあります。この会社、2002年にブラッド・ピットを含めた三人で立ち上げた後、2006年からはブラッド・ピット一人の所有とウィキにはあります。
ひょっとして会社名の「B」は「Brad Pitt」の B?
監督:バリー・ジェンキンス
名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で学校ではいじめられる日々。同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。高校生になったある日の夜、月明かりの浜辺で二人は初めてお互いの心に触れることに。 しかしその翌日、学校である事件が起きる。そして大人になったある夜、突然ケヴィンから連絡がある。翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、ケヴィンと再会するのだが―。(公式サイト)
これが作品賞?という印象です。
フロリダ州リバティシティ、映画の中では黒人の貧困層が多い地域として描かれていましたが、そこに暮らすシャロンの小学生(とアメリカでは言わない?)、高校生、成人の3つの時代が、1,リトル、2,シャロン、3,ブラックとタイトルが付けられ、ほぼ同等に時間軸に沿って並べて作られています。
今さらここにあらすじや概要を書くまでもありませんので、どういうこと? なぜ? みたいないわゆる文句(笑)だけ書いておきます。
まず、リトルの時代。
シャロンがどういう子どもで、どういう状態にあるのかが、映画からはよく伝わってきません。いじめられているとの設定のようですが、事前にあらすじなどを読んでいじめられているんだよと知って見ないとよく分からないくらいです。
確かに最初の方で同年代の子供達に追いかけられて廃墟に隠れるシーンがありましたが、それもフアン(マハーシャラ・アリ)との出会いのために作られようなシーンで、その後もフアンやテレサ(ジャネール・モネイ)との交流を追いかけるように話が進みます。
最後まで見終わってみれば、母親(ナオミ・ハリス)が麻薬常習者で(多分)売春で生活費を稼いでいる設定のようなんですが、初登場のシーンではそうは見えませんし、何に怒っているのかよくわからなかったです。
そもそも、なぜシャロンがしゃべらないのか、なぜフアンはシャロンに優しくしたのか、なぜシャロンはフアンにゲイについて尋ねたのか、自分自身でゲイだと感じる何かがあったのか、映画はそうした疑問には答えてくれません。
シャロンの時代。
すでにフアンは死んじゃっているようですがなぜ? リトルのパートであれだけ重要な扱いだったのに死んじゃってますでいいの?
このパートは、シャロンとケヴィンの関係に焦点が向けられているようですが、見ている間にはその印象が薄く、何となく物語が進んでいく感じです。シャロンに対するケヴィンの思いが何であるのかもはっきりしません。ケヴィンはバイセクシャルという設定なんですかね?
そもそもシャロン自体がケヴィンをどう思っているのかはっきりしませんし、たまたまケヴィンから性的行為(というのか何なのか)を受けたからその後もケヴィン一途になったのかよく分かりません。
シャロンが突然暴行された相手に復讐したのはなぜ? それに、なぜシャロンは逮捕されたのに、その前に暴行した相手は逮捕されないの? どちらのシーンにも教師はいたはず。
ブラックの時代。
この時代のシャロンを演っているトレヴァンテ・ローズがムキムキすぎて違和感ありすぎでしょう。
まあここまでくればおおよそ先もわかりますので、早く進めてという気持ち以外にさほど違和感はありませんが、それにしてもシャロンは本当にゲイなの? 単に恋愛に不器用なだけ? みたいなよく分からない映画です。
結局のところ、何を軸に据えて映画を作っているのかさっぱりわからないということです。
カメラワークも何だか奇をてらっただけのような印象です。
あれ何て言うんでしょう? 人物の周りをカメラがグルグル回る撮り方が2ヶ所あくらいありましたが、何だか突然過ぎて違和感ありました。なぜそこにそれが必要ということを感じさせるのはだめですね。
3つの時代のどこかに芯を据えて撮ればよかったのにと思います。
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