こういう映画を面白く見せるには才能を要す
ホナス・キュアロン監督は、アルフォンソ・キュアロン監督の息子さんで「ゼロ・グラビティ」の脚本にも名を連ねています。
二世がそこそこ活躍するというのはどの世界でもあることですが、やはり環境が人間の成長に大きな影響を及ぼすということでしょう。
ただ、本人に才能が伴えば一流、伴わなければ親の七光りということになってしまいます。
さて、ホナス・キュアロン監督はどうなるのでしょう?
監督:ホナス・キュアロン監督
息子に会うためにメキシコからアメリカへの不法入国を試みるモイセスと15人の移民たち。車のエンジントラブルにより、荒れ果てた砂漠を抜けて徒歩で国境を超える事になった彼らに、突然、銃弾が襲い掛かる!襲撃者は正体不明。逃げ込んだのは身を隠す場所も無い、摂氏50度の砂漠。水なし。武器なし。通信手段なし。“自由の国”を目指す命懸けの逃走劇が今、始まる──!(公式サイト)
メキシコからアメリカへの密入国という設定は結構映画になりますが、実際はどの程度のものなんでしょう?
トランプさんが壁を作るとか言っていますので、大変な問題であることは間違いないとは思いますが、島国の人間にはなかなか実感としては理解し難いことではあります。
この映画、密入国者 対 それをよく思わない襲撃者の追跡劇という極めて単純な設定の映画です。
主役であるモイセス(ガエル・ガルシア・ベルナル)にアメリカに残された子どもに会いたいが故という裏設定があったり、襲撃者であるサム(ジェフリー・ディーン・モーガン)にある種の無常観のようなものを持たせていますが、そうしたことはほとんど生きておらず、ただ単純に追われるものの切迫感を繰り返し見せているだけです。
密入国者は15人(と公式サイトにあるので)、徒歩で砂漠を越えようとしますが、始まって1/3くらい辺りでしょうか、いきなり10人が狙撃されて殺されてしまいます。
あんな人、襲撃するサムのことですが、あんな人がいるんですかね? 密入国者を見つけるやいなや、照準器付きのライフル銃で10人を撃ち殺してしまいます。
「俺はこの土地を愛している」とかなんとか言っていましたが、なんのこっちゃ、それ!?
で、あとは、残りの5人を追っかけ、ひとりづつ殺していくわけですが、最後に女性ひとりとモイセスが残り、格闘の末岩場から落ち、サムは足を折って動けなくなり、殺すこともできたのですが、モイセスは「砂漠に殺されろ」と言い捨てて去っていくという終わり方です。
やはり、こういう単純な設定の映画は才能ある監督が撮らないと無理ですね。
物語がしっかりした作りであれば、誰が撮ってもそこそこ物語で引っ張っていけますが、この映画、追われる者の切迫感だけですからね、さすがに監督の力不足でしょう。
もう少し物語をふくらませるべきでしたね。
それにしてもガエルくん、久しぶりに見ました。「NO」以来です。