いつも心はジャイアント

(記憶曖昧なネタバレ)スウェーデン産の不思議な母子ものファンタジー

ちょっと変わった印象のスウェーデン映画です。

物語は、下の引用を読みますと、肉体的ハンディを跳ね返す感動ものや母子ものを思わせますが、確かにそういうところがあるにしても、そのドラマをファンタジーっぽく描いている映画です。

リカルドが巨人になった自分を夢想するシーンの印象からというだけではなく、映画の作り自体もどことなくファンタジーっぽい雰囲気を持っています。

原題は「Jatten」、スウェーデン語で「巨人」という意味のようです。

監督:ヨハネス・ニホーム

リカルドは頭骨が変形する難病を患い施設で暮している。父はなく、母親も精神を病み、別の施設で過ごしている。リカルドは自らを巨人化した不思議な世界を空想するようになっていた。そんなリカルドは、ペタンクを通じてたくさんの仲間を得て北欧選手権に出場する。優勝できれば、母親と一緒に暮らす事が出来ると信じて―。(公式サイト

リカルド(クリスティアン・アンドレン)の難病というのは、おそらく進行性といったものではなく先天的なものの設定だと思いますが、見た目は頭部の片側が肥大化して目は反対の片目でしか見られなく視界も狭いようです。身長は低く、足もやや不自由で引きずって歩く感じです。

他の障害者とともに施設で暮らしていますが、ペタンクというスポーツでは健常者と共に競技をし、チームの中でもかなり才能があるようです。

で、実は、前半は主にそうした日常的な生活が描かれるのですが、なぜか幾度となく眠気に襲われ、頑張ってはいたのですが、詳細についてはあまり確信がもてません(笑)。

ペタンクの北欧選手権への出場選手を選ぶシーンがあり、これ結構重要なことなのですが、リーダーがリカルドを選ばなかった理由を見落としています。単純に実力の問題だったのか、あるいは障害者だったからなのか、どうだったのでしょう?

ただ、仮に障害者であることが影響したにしても、この映画、全体としてそうした障害者差別のようなことを意識的に取り上げている印象はありません。日々のチームでの練習ではリカルドは生き生きとしていますし、周囲に障害者と健常者を区別するような目を感じさせるような作り方をしていないと思います。

1シーン、リカルドがその見た目がゆえに街で不良に絡まれる場面がありますが、むしろこれも、社会にはこうした差別意識があることも分かっているよとわざわざ意図的に入れたと考えるべきでしょう。

で、代表に選ばれなかったリカルドは、チームの親友ローランド(ヨハン・シレーン)と組んで出場することになります。このあたりのゆるさ、簡単に北欧選手権に出られてしまうというのもいいですね(笑)。

一方の母親は、心の病で施設(病院?)で暮らしています。母親のシーンは何シーンかありましたが、これが結構ファンタジーなんですよね。施設とはいっても、まるで我が家のような個室で、人生に疲れた老女が白いオウムとアコーデオンと思い出に思いを寄せて暮らしているという風情です。なぜ心を病むことになったかは語られていなかったと思います(確信なし)。

そして、北欧選手権、見事にリカルドたちが優勝、その後リカルドの誕生パーティーがありましたがそれは省略して、優勝メダル(だったかな?)と手紙(だったかな?)を手に、母親のもとに自転車で駆けつけます。

このシーン、リカルドが自転車で疾走する様を並走したカメラでとらえたシーンはよかったです。西部劇っぽい音楽が流れ、馬を駆けるイメージなのでしょうか。

こういうところもファンタジーっぽいのですが、その後、施設の職員を振り切り、リカルドが母親の部屋のドアの前に立ちますと、察した母親はドアポストから外を覗きます。

当然、ドアポスト越しに目と目が合うという極めてファンタジックな場面となります。

で、最後は、巨人が(なぜだったかはっきりしないのですが)救急車で運ばれるリカルドを手のひらに乗せ、母親の元に向かい、窓から(おそらく)飛び降りようとする母親を手のひらに受け止め、二人が寄り添って終わります。

書き忘れていますが、当然、リカルドが巨人を夢想するシーンはそれまでにも数回挿入されています。

こういう映画を撮るヨハネス・ニホーム監督ってどんな人だろうとググっていましたら、何作かクレイアニメのショートフィルムを発表していますね。

Johannes Nyholm on Vimeo


Baby trashes bar in Las Palmas

ああ、この感覚ですね、この映画を見てどこか不思議な感じを受けるのは。

【Amazon.co.jp限定】シンプル・シモン(ポストカード付) [DVD]

【Amazon.co.jp限定】シンプル・シモン(ポストカード付) [DVD]