静かなふたり

かなりシュールなフランス映画、イザベル・ユペールの娘ロリータ・シャマ主演

エリーズ・ジラール監督って誰だっけとググっていましたら、「ベルヴィル・トーキョー」というなんとなく記憶のある映画が前作とのことで、記憶を辿ってみましたら「フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ」という企画で上映されていた映画でした。

ただ、残念ながら、他の2作「グッバイ・ファーストラブ」と「スカイラブ」は見ているのですが、「ベルヴィル・トーキョー」は見た記憶がありません。

現在はどうなのか分かりませんが、俳優や映画館の広報も経験されているようです。

監督:エリーズ・ジラール

不器用な彼女が出会ったのは、パリで古書店を営む年老いた男。 風変わりなふたりが紡ぐ愛と人生についての物語。イザベル・ユペールの娘ロリータ・シャマ主演。(公式サイト

公式サイトには「パリの古書店を舞台にくりひろげられる知的でロマンティックなラブストーリー」なんてコピーもありますが、確かにラブストーリーといえばそうなんでしょうが、かなりシュールなラブストーリーです。

男女の年齢差もシュールといえばシュールなんですが、それよりも二人の間のさめた愛情表現をラブというべきなのか、何が愛で何が友情なんて線引きはないにしても、そもそも何に惹かれ合っているのか判然としません(まあ現実はそんなもんですが…)。

さらに、古書店の男性ジョルジュ(ジャン・ソレル)には何やら人に言えぬ過去があるらしく、中頃に見知らぬ男が訪ねてきて、何だかわけの分からぬままにその男は倒れており、マヴィ(ロリータ・シャマ)とジョルジュが、死んでるの? いや突然倒れたとか話しながら、男を車に乗せて、あれは病院へ言ったんですよね、といった具合に、かなりシュールな展開で、この時だったか、ジョルジュは自分が「赤い旅団」の生き残りだと言っていました。

赤い旅団の生き残り!? と、日本で言えば「連合赤軍」の生き残りと聞くようなインパクトではないかと思いますが、マヴィは全く動じることなく行動を共にしていきます。

話はそれますが、赤い旅団について、ウィキペディアにこんな記述がありました。

フランスで逮捕された(赤い旅団の)元メンバーのマリーナ・ペトレラのイタリアへの引渡しが、フランスのニコラ・サルコジ大統領の妻でイタリア人のカーラ・ブルーニと姉のヴァレリア・ブルーニ=テデスキによる口添えにより阻止されたが、この行為がイタリア国内の被害者の遺族たちの怒りを招き、大きな外交問題になっている。

出典は2008年10月13日付のインディペンデントの記事です。

カーラ・ブルーニさんは歌手ですが、姉のヴァレリア・ブルーニ・テデスキさんは俳優さんで監督もしたりしています。最近では、「歓びのトスカーナ」や「人間の値打ち」に出ていました。

この話が直接的にこの映画に関連しているわけではないのでしょうが、オリジナル脚本のようですので、何かのヒントになっているのかもしれませんね。

で、映画に戻りますと、その後、おそらく昔の仲間との何やかや(よく分からない)でジョルジュはどこかへ旅立ってしまったり、(これまたよく分からないのですが)戻ってきたり、ラストは、マヴィが恋人(と思う)いるところを車から見ているシーンで終わったりと、手法としては、人物の心情を追っていくスタイルではなく、淡々とカットを積み重ねていくだけですので、まあ結果としては俳優次第の映画ということだと思います。

マヴィをやっているのは、ロリータ・シャマさん、イザベル・ユペールさんの娘さんだそうです。

この映画では、あまり特徴は感じられず、こうした映画に向いているのかどうか、それもはっきりしない、(俳優次第という意味での)結果、映画も何とも焦点が曖昧でよく分からないということになっていると思います。

言うなれば、フランス映画だから成立するような映画で、日本映画でしたら、マヴィはこじらせ女子にしか見えない映画になっていたかもしれません。

シュールという印象で書き忘れていました。

突然かもめが落ちてくるシーンがあり、その原因がアイルランドからの(ハッカーだったかな?)◯◯攻撃かといった新聞のカットを入れたりしていましたが、フランスってアイルランドと関係がまずいんですかね。私の見間違いですかね。それに、反核のデモといった言葉も頻繁に出して、(チープな映像の)デモそのもののシーンも入れていました。

おそらく、ストレートに語ることを避けているのか、意図的に映画の焦点をぼかしていますね。

まあそれが成功しているかどうかはかなり微妙だとは思います。

新鮮という印象ではありませんが、画はとてもきれいでした。