音楽がうるさくて映画に集中できない、でも結果よかった?
もうこういう映画はいいよね。
と、思ったんですが、そんなことよりも、この映画、むちゃくちゃ音楽がうるさかったですね。
私だけですかね? ひょっとして、そのせいで映画に集中できず、もういいと思ったとか…?
音楽はジョニー・グリーンウッドさんで、あらためて見てみますと、音楽を担当している映画、ほとんど見ています(笑)。つい最近見た「ファントム・スレッド」もそうじゃないですか!
監督:リン・ラムジー
その「ファントム・スレッド」もほぼ全編音楽が入っていたと思いますが、この映画もそうで、ただ傾向は全く違って、こちらはなんて言うんでしょう、効果音のようなと言いますか、ガンガンと、頭にガーンと響くようなデッカイ音(音楽?)が頻繁に流れるのです。
映画における音楽って、ミュージカルや音楽映画でもない限り、ここぞというところの音楽が耳に残り、後々音楽とともに映画を思い出すみたいなものがいいわけで(って、古い?)、この映画みたいに殺し屋だからといってガンガンと攻撃的な音楽を使うというのはお勧めしません(って、大きなお世話?)。
で、映画の話にはいりますと、映画の作りはいいんですが、テーマがしょうもないです。
人生に疲れたおっちゃんが無垢な少女に癒やされる、あるいは癒やされたいと願う映画です。
「タクシー・ドライバー」から一歩も進んでいません。
ただ、この映画、いいところもありまして、おっちゃんであるジョー(ホアキン・フェニックス)のことをごちゃごちゃ説明しませんし、かなり冷めた目でつくられています。殺しのシーンはいっぱいあるのですが、血がドバっと飛び散るカットはあっても殺すカットはないとか、監視カメラの映像で殺すシーンを見せたりとか、そんな感じで、唯一リアルさを出したカットは、ジョーが自殺を妄想し自ら喉を撃ち抜くカットぐらいでした。
ですから、いわゆるクライム・アクションを狙ったわけではないということでしょう。そういう意味では、見ているものを一歩引かせてしまう音楽がよかったのかも(笑)とも言えます。
ジョーは誰かに何かを頼まれ何かをしています(笑)。
書いた自分が笑ってしまいますが、本当に始まりはこんな感じです。でもそんなに気にならずに見ていけます。
かなり頻繁に、「背筋を伸ばせ」などと叱られる男の子の映像や砂の上に横たわる人間の足の映像、そしてこれはしばらく後からだったと思いますが、子どもたちが大勢死んでいる(?)映像がフラッシュバックされます。
映画を見慣れていれば、映画の内容など知らずに見ていても、しばらくすれば、ジョーが金で人殺しをも厭わず引き受ける仕事(?)をしていることや過去の記憶に苛まれて苦しんでいることがわかります。さらに、その記憶が虐待や戦争経験によるものだろうと割と簡単に想像がつきます。
ですから、そうしたことに説明がなくても苦にはなりませんし、おそらく監督にもそうした計算があったのでしょう、ごちゃごちゃ説明されないというのはそういうことです。
で、そうしたことがおよそわかったところで、ジョーが、本題である上院議員の娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)の救出を依頼されます。これもほとんど説明されることなく進み、ジョーがその場所をどうやって突き止めたのか忘れてしまいました(ペコリ)が、とにかく売春組織のアジトのようなところへかなづちを持って乗り込み(オールドボーイか?)ニーナを助け出します。このシーンを監視カメラの映像で見せていました。
ジョーとニーナはいったんモーテルにはいり、そこでニーナの父親が飛び降り自殺したとのニュースを見ます。と同時に、あれは警官だったのかな? に襲われ、ニーナは再び連れ去られます。
あらすじなんかどうでもいいか(笑)、結局こういうことです。
実は、ニーナの父親は自分の社会的地位目的(かな?)で、小児性愛者の(どこかの)州知事に娘を売ってしまったということです。そんなことあるか!?とは思いますが、とにかく、良心の呵責に耐えかねて自殺してしまったようです。
ジョーが連れ去られたニーナを追って州知事の屋敷に駆けつけますと、州知事はニーナに喉を掻っ切られて死んでいます。
レストランで向かい合って座るジョーとニーナ。
トイレに立つニーナ。
ひとり残されたジョーは拳銃を喉に当てて自殺(する妄想を)します。
ニーナが席に戻り、「It’s a beautiful day.」とつぶやき、店から出ていきます。
ジョーも(It’s a beautiful day. と言ったと思う)店を出ていきます。
という物語です。
結局、この映画は、ジョーの行動、暴力や殺しなどどうでもよく、ジョーが PTSD、ああ書いていませんでしたが、ジョーが悩まされているのは子供の頃の父親からの虐待、そして砂漠でしたからイラク戦争でしょうか、そうした戦争体験などからくる心的障害なんですが、そのためにジョーは自殺願望、というよりも自殺妄想にとらわれている状態にあります。
ニーナはと言えば、たとえ小児性愛者からの性的虐待を受けていても無垢なまま(でいられるというおっちゃんの妄想)の少女です。
そして、その二人がまるでボーイ・ミーツ・ガールのように出会います。
という物語を、男性監督だけではなく女性監督でさえ妄想するという映画です。
もうそろそろ映画も「タクシー・ドライバー」から一歩進んでほしいですね。
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