そんなには褒めないよ。映画評

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日日是好日

お茶を始めてみたくなる映画。ネタバレしていますが、それを知って楽しめない映画ではありません。

2018/10/06

お茶を始める人が増えるかもしれませんね。

「お茶」そのものだけではなく、そのまわりに広がる時間と空間、そしてそれらを味わい楽しむこと、映画では茶事と言っていましたが、そうした一連のことが魅力的に感じられる映画です。

公式サイト / 監督:大森立嗣

この「日日是好日」、樹木希林さんが亡くなられたからということもあるのでしょうか、 来週10月13日全国公開を前に、この連休の3日間、先行上映されています。

森下典子さんの『日日是好日−「お茶」が教えてくれた15のしあわせ−』というエッセイが原作とのこと、エッセイとして書かれているわけですから当然かと思いますが、ご本人は40年の茶歴(?)があり、森下宗典という茶名を持ってみえるとのことです。

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

  • 作者: 森下典子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/10/28
  • メディア: 文庫
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映画ではかなり細かくお茶の作法が描かれています。正直、お茶を習う20数年という話が映画になるのかなあ? と思いましたが、たとえ俳優の演技だとしても、「茶の道」そのものに深いものがあるのでしょう、見ていて飽きません。

二十四節気のタイトルが入り、時の移ろいとともに床の間の掛け軸や花入が変化していきます。もちろん季節や天候によって庭の風景も変わっていきます。そして、忘れていけないのが「音」、自然の音もそうですが、湯を注ぐ音、柄杓を置く音、茶を点てる音などなど、そうしたところにかなり力が注がれている感じです。

二十歳の大学生典子(黒木華)は、いとこの美智子(多部未華子)とともに、近所のお茶の先生、武田先生(樹木希林)のもとに毎週土曜日に通うことにします。

初日の袱紗さばき、これ、結構惹きつけられます。かなり長い時間だったように思います。単に形ということではありませんが、いわゆる様式美のようなものが確実にあります。 美しいです。

映画は、その後の典子の20数年を描いていくわけですから、当然、就職、恋愛、結婚など、するしないは別にしても、当然人には様々な出来事がおきます。ただ、そうした人生のイベントはほとんど描いておらず、ナレーションでふれる程度におさめています。映画のほぼ8割方、お茶に関わるシーンで構成しているということです。

それが成功していると思います。映画の主役は「茶事」みたいな感じでとてもいいです。

実際、公式のストーリーには、

大学時代に、一生をかけられるような何かを見つけたい。(略)
典子は真面目な性格で理屈っぽい。おっちょこちょいとも言われる。そんな自分に嫌気がさす…

などとありますが、典子が自分のやりたいことを探しているようにはみえなく、就職できなかったのかしなかったのかわかりませんが、アルバイトですましていることに焦りをみせるようなこともありません。シーンとして描かれていないだけではなく、そうした人生における焦りを感じさせるようなところはほとんどありません。性格にしても、理屈っぽくもありませんし、おっちょこちょいでもありません。

まあ言ってみれば、華ちゃんがお茶を習っている映画と考えればいいように思います。それで一本の映画になるんですから俳優としては優れているということでしょう。もちろん樹木希林さんや他の俳優さんたちあってのことではあります。

この映画、ひとりの人間の心の成長期のような映画ですので、物語として、特にネタバレのようなこともありません。ただ、やはりそれなりにはメリハリも必要ということなのか、典子自身の失恋や新しい出会いのこと、あるいは新しく入ってくるお弟子さんのことなどをちらちらと入れつつ、最後に、父親の死と、そしてその直前、父親から電話があったにもかかわらず会えずに失ってしまったことの悔恨の情を、ある意味、映画のクライマックスとしています。

そうした様々な人生の変遷と、そして「茶の道」を通じて典子は思います。

世の中には、
「すぐわかるもの」と、
「すぐわからないもの」の
二種類がある。
すぐにわからないものは、
長い時間をかけて、
少しずつ気づいて、わかってくる。
子供の頃はまるでわからなかった
フェリーニの『道』に、
今の私がとめどなく
涙を流すことのように。

(公式サイトより)

映画のファーストシーンは、子どもの頃、両親に連れられて「道」を見に行ったのだけれど、何が面白いのかさっぱりわからなかったと始まります。

監督は、大森立嗣さん。

「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「まほろ駅前多田便利軒」「さよなら渓谷」「セトウツミ」「光」と、結構見ていますが、出来にバラつきのある監督ですね。「光」はボロクソに書いています(ペコリ)。

映画のつくりとしてはフェードアウトが多すぎるきらいはありましたが、お茶のシーンにこだわって撮られており、とても良かったです。

ケンタとジュンとカヨちゃんの国

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