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ホスティル HOSTILE

(ネタバレ)終末系ビジュアルの中で描かれる純愛もの、ただ既視感は強し

2018/10/08

タイトルをちらっと見て「ホステル」? と、見てはいないのにタイトルだけ記憶しているホラー映画が浮かんだのですが、そうではなく「ホスティル」でした。「敵意のある」といった意味のようです。

伝染病(と公式サイトにはある)によりほとんどの人類が死滅した世界を舞台にしており、クリーチャーに変貌した人間の「敵意」を現しているのでしょうか。

公式サイト / 監督:マチュー・テュリ

ただ、仮にそうだとしても、クリーチャーが人類に敵意を抱く理由があるようには描かれていませんし、いきなりネタバレしてしまいますが、あのクリーチャーは恋人であった女性をなぜ襲うのでしょう?

考えられるのは、伝染病自体が人類への敵意を持ったウィルスによるということですが、それならば、ラストシーン、抱き合って終わるのは理屈にあいません。むしろ、涙を流しながら食べるとか、破壊するとか、そんなエンディングのほうが納得がいきます。

と、いきなり突っ込みすぎてしまいました(笑)。

結局、この映画、単純なラブストーリーをポストアポカリプスの世界に置いただけの映画ということでした。

冒頭、人類ほぼ滅亡後のビジュアルは MadMax 風です。荒れ果てた砂漠を一台の車が走っていきます。運転しているのはジュリエット(ブリタニー・アシュワース)、キャップを目深にかぶり、ストールでマスクまでしています。

ガソリンスタンドでしたか、廃墟を見つけ、拳銃を手にして入っていきます。しかし、誰もおらず何もありません。無念さと何かに対する緊張感が解け、帽子とストールを取り、ほっと一息。その時、階上から何かの咆哮が聞こえ、身構えたジュリエットは、帽子もストールも置いたまま外へ飛び出します。

そしてまた別の場所、置き去りにされたようなトレーラーの陰に血まみれの男がいます。ジュリエットにはすべてわかっているようです。男が手でお腹を抑えているのを何かを確認するためなのか、手を離せと命じたり、トレーラーの中に食料はあるのかと尋ね、あるとの答えに、拳銃を構えて中に入っていきます。

数発の銃声、ジュリエットが缶詰を抱えて出てきます。男は息絶えています。

車を走らせるジュリエット、誰かと無線交信し、現状報告します。公式サイトから引用しますとこういうことのようです。

爆発的な伝染病が地球を襲い、わずか2〜3千人の人類だけが生き残った。
過酷な状況の中、食料とシェルターを必死に探し続ける生存者たち。
だが生き残りを懸けてさまよううちに彼らは気づく。
夜になると未知のクリーチャーが現れ狩りを始めることに…。
人間は息を潜め隠れるしかなかった。

ジュリエットは世界の終末を生き延びた若き女性。
過去の人生から、諦めずに闘うことを学んできた。

彼女は自分が属する生存者グループの中で最もタフで肝の据わった存在として、広大な荒野や廃墟と化した街の周辺へ車を走らせては物資や食料を探している。

で、ハンドルを握りながら、サンバイザーだったか、グローブボックスからだったか、一枚の写真を取り出しところ、開けていた窓からの風で写真が飛ばされてしまいます。あー!と思った瞬間、車はハンドルを取られ横転し、ジュリエットは気を失ってしまいます。

ジュリエットが意識を取り戻したのは夜、車は上下逆さまの状態、足には車の部品が貫通し骨折状態です。

ここからがこの映画のメインです。

人間を襲うクリーチャーがいます。クリーチャーは光に弱く昼間は行動できないようです。当然、ジュリエットを襲ってくることになります。

足を怪我して動けないジュリエット、仮に動けても車は使えない、クリーチャーに有効な光はヘッドライトくらいしかありません。

そうしたいわゆる定型のホラーサスペンスが始まります。

と思いましたら、ある時、ジュリエットの何かの行動であったか、ナレーションであったか、突然人類滅亡前のシーンに飛びます。

どこかの画廊です。ジュリエットがフランシス・ベーコンの抽象画を眺めています。男が近づいてきて話しかけます。画廊の持ち主ジャック(グレゴリー・フィトゥーシ)です。ベーコンをあのベーコンに引っ掛けて軽口を叩きます。要はナンパです。

ということで、(映画の中の)現実であるジュリエットとクリーチャーの闘いの一夜に、過去のジュリエットとジャックの恋愛がフラッシュバックするスタイルで交互に描かれていきます。

クリーチャーとの闘争は、まあ定型のドキドキハラハラのパターンです。過去の二人の恋愛は、ジュリエットが実はジャンキーであるとの意外さがあったりしつつ、それでも互いに求め合うという、まあこちらも定型の純愛路線で進み、何が起きたのかよくわからないままに、テロなのか、これまたよくわからないままにジャックが毒ガス事件に巻き込まれ、喉をやられて話が出来ないという状態になります。

で、ここらあたりまできますと、ほぼ誰にでも想像がつきますが、ジュリエットを襲っていたクリーチャーはジャックだったということです。件の写真は、ジャックとの思い出の写真です。

映画は何も語っていませんのでよくわかりませんが、その毒ガス事件と人類滅亡は関連はないんだろうか? とか、伝染病で人類滅亡ってひとことですましていいの? とか、例によって、人類ってアメリカだけじゃないよとか…

などという疑問を感じる者には、たとえラブストーリー好きでも、ちょっとこれは感動は無理でしょうという映画でした。

それに、何をおいても、物語としても映像的にもいろいろ既視感が強すぎます。終末の世界観、クリーチャーとの闘争、ジャンキーの描き方、そして二人のラブストーリー、ラストシーンのビジュアル、そもそもテーマとしてはメジャーが描くような内容をメジャーが描くような描き方で描いても、今更感が先にきてしまいます。

ちなみに、マチュー・テュリ監督はフランス人です。ただ、映画業界でのキャリアはアメリカでのもののようです。

Mathieu Turi – IMDb

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