トマ・ピケティさんの著書を読むきっかけになるか…?
数年前に話題になったトマ・ピケティさんの『21世紀の資本』が映画になりました。
当時、手にとる前から諦めた記憶があります(笑)。どんな映画になっているのでしょう。
映画館再開一本目としては選択を誤りました(笑)。
これは映画というよりも、ビデオ論文(の概要)みたいなもので、もう少し具体的に言いますと、NHKスペシャルに近い感じです。
ピケティさんを含め十数人の学者のインタビューを構成して、その内容に合う過去の映像や映画、コラージュ映像などを編集し、それを音楽で補強するという映画です。
日本の公式サイトには「原作・監督・出演:トマ・ピケティ」なんてクレジットされていますが、IMDbを見る限りではピケティさんは「based on the book by」と「adapted by」だけです。いくら宣伝とは言え「監督」はやりすぎでしょう。
内容は、ピケティさんの理論の最も有名(だと思う)な部分である、資本(資産)が生む利潤は経済活動が生む利潤よりも大きいという、つまり、数式で表せば、
r (資本収益率) > g (経済成長率)
という視点で18世紀の産業革命前後からリーマンショックまでの200年あまりの歴史を描いていくというものです。
そして最後に、このままでは格差は広がるばかりであり、それを止めるには資本(資産)に課税すべきだと終えています。
資本(資産)は相続されて(投資により)さらなる利益を生み、「r > g」である以上、持たざるものはいくら働いても格差が埋まることはないということです。
というストーリーが、実写フィルムや映画「ウォール街」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ザ・シンプソンズ」「エリジウム」など(公式サイトから)のワンシーンを引用して描かれていきます。
で、映画として面白いかと言いますと、面白くありません。
この映画で語られているストーリーは、今では、日々様々なメディアから発信されていることでもあり、現代に生きる者なら実感として感じていることです。おそらくこの映画を見ようかと思う人であれば何を今さらという感じがするのではないかと思います。
もちろん、ピケティさんの『21世紀の資本』はこんな単純な内容ではないと思いますのでその啓蒙的な意味合いはあるのかなとは思いますが、映画のつくりとしてはプロパガンダ的な印象が強いです。
十数人の学者へのインタビューにしても何を質問した答えなのか、前後の文脈もわからないままつまみ食いしているように見え、さらに字幕ですと消化しきれません。なんとなく格差はなくならないよと言われているだけのような感じがします。
ドキュメンタリーであってもこの映画のようにストーリーがあり、仮にリアルな実写で構成されていたとしても、そこにはドラマと同じくつくりての考えや意図があるということが明確になるという意味では意味のある映画ではあります。
なお、この映画のストーリー自体には何の異論もなくその通りだと思います。
トマ・ペケティ著『21世紀の資本』に挑戦してみよう。