万事快調<オール・グリーンズ>

南沙良さん、出口夏希さん、吉田美月喜さんの3人がとてもいい

映画.com の「当時21歳の現役大学生だった波木銅が第28回松本清張賞を満場一致で受賞し話題を呼んだ青春小説「万事快調 オール・グリーンズ」を映画化」との紹介文を読んで、へー、すごいなあと興味をもった映画、これ、おもしろいね。

万事快調<オール・グリーンズ> / 監督:児山隆

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ネタバレあらすじ

ひとことで言えば、女子高生青春クライム映画です。

女子高生3人が学校の屋上で大麻を栽培し売って大金を得ますが最後は悪いお兄ちゃんたちに騙されて泡と消えてしまいます。ただ、それで終わる映画ではありません(笑)。

上の Amazon で原作の試し読みが出来ます。その範囲内の話ですが、映画は原作よりおもしろいかもしれません。理由は3人の俳優です。南沙良さん、出口夏希さん、吉田美月喜さん、3人ともうまいですし、キャラとしていい味を出しています。

監督は「猿楽町で会いましょう」の児山隆監督です。ほとんど記憶していませんが今読み返してみましたらあまりいいことは書いていません。ただその映画は「未完成映画予告編大賞」という本編のない予告編で審査するというコンテストのグランプリを受賞し、その後制作費が出て本編が撮られたという映画です。レビューにも書いていますが、本編よりも受賞した「予告編」のほうがいいという映画ですので、案外監督としての力はあるのかもしれません。

この「万事快調<オール・グリーンズ>」が長編2作目です。

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底辺高校の3人

実名の茨城県東海村が舞台です。でも原発のことは一切語られません。3人は地元の高校の機械科に通う2年生です。

設定は地方ゆえの鬱屈さと希望を感じさせない日常を生きる若者たちという、まあよくあるパターンです。ましてや機械科で学んでいるわけですから、将来は地元の工場で働いて同僚と結婚して子どもを産んでといった未来しか描けないと3人は言っています。

こうした設定の映画は結構多いとは思いますが主人公が女子高生というのは珍しいんじゃないでしょうか、どうなんでしょう。そのせいかどうかはわかりませんが、鬱屈感みたいなものは言葉では語られてもあまり強調されていませんし、大麻栽培も犯罪でありながら一切後ろめたさを感じるような描き方ではありません。

朴秀美(南沙良)はラッパーです。夜、家を抜け出して数人の仲間とラップで掛け合い(サイファーというらしい…)をやっています。ただ人に知られるのを嫌がっています。学校ではスクールカースト上位の矢口美流紅(出口夏希)に机を乗っ取られて床に座り、どうすべきかなどと岩隈真子(吉田美月喜)と話したりする関係です。

説明が楽ですのでスクールカーストとは書きましたが、そんなものがあるようには見えませんし、そんな話ではありません。

矢口美流紅は見た目もよく、陸上部で足も早く、いつも数人の男子生徒を従えている設定です。という感じで映画は始まりますがそんな話ではありません。ある日、機械を使った実習で小指を切断してしまいます。運悪く飛んだ小指を誰かが踏んづけてしまったために再接着できずにいます。

矢口美流紅だけは家庭が詳しく語られます。母子家庭で母親がちょっと変わったキャラクターになっています。私にはちょっと説明できませんので見てください(笑)。いずれにしても矢口美流紅は日々母親の望む娘を演じており、卒業したら家を出たいと考えています。映画オタクです。

岩隈真子は夜はボーリング場でアルバイトをしています。ここを出るためにお金が必要だと言っています。漫画を書いています。

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底辺から抜け出すには金だ

ある日、朴秀美はラッパー仲間から、名を知られたDJ佐藤幸一(金子大地)が曲をつけてやるから来いと言っているといわれて行きます。制服を来てこいと言っているというんですからそりゃ警戒します。佐藤幸一は曲をつけてやる代わりにやらせてくれと言い近づいてきます。佐藤幸一が突然倒れます。朴秀美が出された飲み物をすり替えていたのです。ナメんなよと言いながら、財布からお金を抜き取り、部屋を漁る朴秀美です。佐藤幸一が襲ってきます。朴秀美が手にした何かで連打します。佐藤幸一は血を流して倒れています。朴秀美は指紋を拭き取り、金庫の中の大麻の種を取り逃げます。佐藤幸一は死んでいません。

ある夜、朴秀美は帰り道に矢口美流紅と会います。矢口美流紅は、ラップやってるの見たよ、やってみてよと言います。朴秀美はヤダよと言いながらも、矢口美流紅の見た目への思い込みからなんでしょう、矢口美流紅に怒りをぶつけるようにラップし始めます。矢口美流紅はいいじゃないと感じ入っています。

実際に話してみればお互いに思っていた人間と違います。本音で話し合うようになった2人がボーリング場にいます。ふと見ると岩隈真子がアルバイトをしています。

3人揃いました。このままこの町で人生終わるのかと嘆きながら、やっぱお金だよねとなり、朴秀美が大麻で稼ごうと言い出します。犯罪だよ、捕まるよという話も出ません(笑)。岩隈真子が多少抵抗しますが、おぬしもワルよのう程度です。

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オールグリーンズ誕生

廃部となった園芸部のビニールハウスを使おうということになり、園芸同好会の活動を学校に届け出て3人はオールグリーンズを名乗ります。

このあたりはテンポよく進みます。廃墟然のビニールハウスを多少修復し、プランターや植木鉢に種を撒き、そして3、4ヶ月後、そろそろ収穫という頃、ハウスの中で裸で抱き合っている男子生徒2人を見つけます。

こうした展開も今どきなんでしょう。3人はお前たち、何やってんだと言いながらもその行為自体は問題にしません。僕たちは卒業したら一緒に住むんだという2人にそんなセクシュアリティを問題にしてんじゃねえよなどと言っています。3人はその2人をプッシャー(売人…)にすることにします。

収穫した大麻を乾燥させ、朴秀美がネットで買い手を探し、次々に売りさばいていきます。1gあたり5,000円と言っていたように記憶しています(違っているかも…)。

もちろん大麻絡みのシーンだけではなく、朴秀美がラッパー仲間に告られたり、矢口美流紅が映画の話をしたり、海辺で3人がリゾート気分で将来を話すシーンなどもあります。

と、順調に進むかとみえましたが、朴秀美の前に佐藤幸一が現れ、2千万にはなっているはずだ、半分の1千万でなかったことにしてやると脅してきます。

3人の前に暗雲立ち込める、というほどでもありませんがどうしようという話になり、さらに稼ぐために乾燥大麻から成分を抽出して大麻ワックスにしようということになり、岩隈真子を慕う漫画仲間の科学部の後輩の男子生徒を仲間に入れます。このシーン、ここじゃなかったかもしれません。

とにかく、一気に大金を稼ぐために大麻ワックス(乾燥大麻だったかも…)を持って東京に出向きます。どういう手づるで取引相手を知ったのかわかりませんが、とにかくそういう裏のヤバい話には一切触れないで話を進めようということだと思います。結局、大麻だけ取られお金は手に入りません。

卒業式です。行動では校長が挨拶をしています。矢口美流紅と岩隈真子もいます。

屋上です。オールグリーンズのユニフォームを着た朴秀美がハウスの中の大麻に灯油をかけています。抽出のために使っていた引火性の缶もあります。

佐藤幸一がやってきます。朴秀美はハウスを指さしています。中に入っていく佐藤幸一、朴秀美がライターに火を付け放り込みます。燃え上がるハウス、そして爆発します。

卒業式会場は大混乱、そこに爆発で発生した煙が入ってきます。皆ラリって踊りだしたり、笑ったり、さらに大混乱です。ちょっといただけないシーンです(涙)。

矢口美流紅と岩隈真子だけはなぜかシラフです。屋外に出た矢口美流紅が屋上を見上げますと朴秀美が屋上から飛んでいます。自殺かと思いましたら、駐輪場か何かの屋根の上に落ちて、その後もピンピンしていました(笑)。佐藤幸一も黒焦げになりながらもハウスから逃げ出していました。

犯罪ものなんだけれども殺人だけはまずいだろうという配慮でしょうか。ラストシーンがなんであったか忘れました(笑)。

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感想、考察:引用がかなりあざとい

最初に書きましたようにこの映画がおもしろいのは、南沙良さん、出口夏希さん、吉田美月喜さん3人によるものです。

青春ものでありながら犯罪ものという私には珍しい内容でしたのでおもしろく見ましたが、映画のパターンとしては青春ものの王道をいっています。大麻栽培ではなくバンドを組むとか映画をつくるとかに入れ替えてもそのまま成り立ちます。爆発は無理かもしれませんが(笑)。

3人のうち、特に矢口美流紅だけがかなり作られた人物になっています。美流紅も「みるく」と読みますし、本人はその名が嫌なものですからハーヴェイ・ミルクからとられているとやや茶化し気味の自虐ネタのようなことを言っています。ところが、実は本当に父親がハーヴェイ・ミルクから付けたとものだと母親から聞かされます。父親の所在や生死などには触れていませんでしたので、あるいはゲイであるのを隠して結婚していたけれども自分を抑えきれずに出ていったということかと思って見ていました。

それに矢口美流紅は映画オタクなんですが、引用される映画がまさしくオタクなんです。ああ、シネフィルか。それにそもそもタイトルの「万事快調」自体がゴダールの映画から取られていると思われます。

ああ、朴秀美のMCネームが「ニューロマンサー」でした。ウィリアム・ギブスンのサイバーパンクの代表作です。

おそらく原作に引用されているものだと思いますが、考えてみればどの引用もアート系雑誌で紹介されたり特集されたりするような(ちょっと前の時代にかな…)著名なものばかりですね。

とにかく、深く考えずに楽しめる映画でした。