猿楽町で会いましょう

女はコワイは今の時代では女性蔑視っての知ってた?

先週末に、どんな映画が公開されるのかなとざっと映画.comを見た時には見ることはないだろうと思っていた映画です。が、ふと目にしたFilmarksだったか、映画.comだったかの感想で見ることにしました。

ただ、点数が1だったか2だったかの良くない評価です(笑)。もともとあまり感想は読まないほうですし、読むにしても点数の低いものを読むことが多いです。その感想も特に記憶に残ったというわけではなく、気分が悪くなったみたいな内容でした。

猿楽町で会いましょう

猿楽町で会いましょう / 監督:児山隆

女はコワイ?

「未完成映画予告編大賞」というコンテストがあるようです。単に短編ということではなくタイトル通り、まだない映画の予告編をつくって応募するということのようで、その第2回のグランプリ作品の本編として撮られたのがこの映画です。グランプリを受賞するとその本編を制作できるということです。

で、そのグランプリ作品を見てみましたら、本編と何かが違いますね?!

本編映画よりもこの予告編のほうがユカ(石川瑠華)が生きています。

本編映画の方はユカが既視感の強い女性、パターン化されたおっちゃんから見たユカになっちゃっています(なっちゃって、がおっちゃん言葉か?)。

これは本編の制作段階で製作側(オフィスクレッシェンド)が口を出して悪い方へいっちゃったケースかも知れないですね(ペコリ)。 

受賞予告編がどういう本編を予定してつくられたものかはわからないにしても、少なくとも「なぜユカは嘘をついたのか?」という視点が感じられます。ところが本編映像には、これまで多くの映画やテレビドラマで描かれてきた「女はコワイ」という視点、女が男に媚を売って(嘘をついて)世に(男に)認められようとするという視点以上のものがありません。

受賞予告編を見る限りではユカの映画のはずだったものが、興行成績ということがあるのかも知れませんが、小山田修司に金子大地さんをキャスティングしたことから修司の映画になってしまったのかも知れません。修司の純愛に対してユカの裏切りという映画になっています。

そんな映画、この時代、もういいでしょう。

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

修司(金子大地)とユカ(石川瑠華)の物語です。一見ユカの映画のようにもみえますが、基本は、修司がユカと出会い、好きになり、心の底から大切なひとだと考えているのに、ユカは世に出たいがために男たちに媚を売り、それを知った修司が苦しむという話です。

2年くらい(かな?)の時間軸が3つに分けられ、過去から2、1、3と並べられています。つまり、最初に2の修司とユカが出会いがあり、あれこれあってやっと愛し合うところまでいき、次に1に戻り、ユカが修司に出会うまでの話となり、そして最後は、二人がつきあい始めたところから壊れる最後までいきます。2019年何月何日などと具体的な日付が入りますが、その日付に特別な意味は感じられません。また、タイトルとなっている「猿楽町」もそうでなくてはいけない意味は感じられません。

率直なところ、映画として新鮮なところはありません。ダメじゃないんです、普通にうまいです。普通にテレビドラマは撮れる監督でしょう。ただ、それだけです。それにCMを仕事にしている割には映画が冗長です。

児山隆監督、映画は初のようですが、見たことがあるかも知れないというメジャーなCMを撮っている方です。個人サイトを持っておりこれまでの作品紹介もあります。

物語はいたってありふれています。

パート1

修司(金子大地)は新米カメラマンです。販促用のカタログ写真を撮る毎日です。雑誌の表紙を飾るようなカメラマンを目指す修司は、宣材を持って売り込みに行きますが、雑誌編集長からは「何が撮りたいのかわからない、パッションがないんだよ」と言われてしまいます。ただ、編集長はふと思い出したように、これやってみる?とインスタ用の写真を撮ってほしいというユカ(石川瑠華)を紹介してくれます。

修司とユカの出会いです。

街なかでの撮影を終え、修司は今から写真見る?とユカを自分のアパートに誘います。ユカは何もしない?と言いついてきます。結局ユカは泊まることになり、ひとつベッドに寝て(そこは普通修司は床でしょう)修司がキスをしようとしますとユカは何もしないって言ったじゃないと涙を流しています。

その後、プロフィール写真を撮りたいというユカのインスタを見た修司は撮ろうか?と投稿しますがなかなかリプがありません。相変わらずカタログ撮影の日々でやや落ち込み気味のところにやっとリプがあり、撮影となります(ここはスタジオだったかな?)。

その夜、修司はユカのアパートまで送っていきますが、ユカは4階の2番めとは教えるものの入口でここでいいと譲りません。

修司は撮影したユカのポートレートをフォトコンテストに応募します。

ある雨の夜、玄関チャイムが幾度も鳴ります。ドアを開けますとずぶ濡れのユカが立っており、涙声で一緒にいたい(なんて言ったかな(笑))と言い修司に体をあずけてきます。二人は初めて結ばれます。

パート2

ユカが修司と出会うまでの経緯が描かれます。

深夜バスの休憩でしょうか、自販機の前で小銭がなく困っているユカが男にナンパされます。男は良平、後にユカが仕事はデザイナーみたいなことと言っていました。

このシーンはそれだけですが、後に一緒に暮らしているシーンがありますのでそのまま良平のアパートにいついたのでしょう。

ユカはタレントのような何かを目指して新潟から出てきたらしくタレントスクール(みたいなもの?)へ通っています。特待生のつもりで入ったものの、それは入学金免除だけで80万円くらいの授業料が必要と言われます。

同じスクールに通う久子が声を掛けてきます。メンズエステの仕事に誘われます。風俗ギリギリのグレイなエステです。

客にいわゆる業界人風の男がきます。ユカがタレント(みたいなもの)を目指していると言いますとなにか紹介しようかと性的マッサージを求めてきます。

ユカは修司にインスタ用の写真を撮ってもらうことになります。

考えてみれば、インスタ用の写真の撮影なんてユカに何のメリットもなく紹介してもらうほどのことじゃないですし、逆に修司に報酬を払わなくっちゃいけなくなりますね。

パート3

このあたりになりますと、内容も内容ですし、描き方も冗長ですので、見るのも億劫になっておりあまり記憶していません。適当にすませます(ペコリ)。

時間軸はパート1の続きです。

ユカを撮ったポートレートが入賞したらしく修司に仕事が入るようになっています。ただ、修司はユカと互いに好き同士との実感が持てないらしく落ち着かない日々を送っています。

ユカは例の雑誌者の編集長と関係を持つようになっています。

エステの仕事を紹介してくれた久子は俳優として売れ始めています。しかしユカには仕事はありません。久子がエステから紹介料をもらっていたことを知ります。ユカは久子がエステで働いていたとネットに書き込みます。

修司はユカのアパートを訪ね、その部屋に男が入っていく姿を目撃します。翌朝まで待ち続け、男が出た後にユカを問いただしますと、ユカはもう別れているの、同居しているだけと叫び、修司は信じられないと言います。

どこかに、フラッシュバックだったと思いますが、ユカが良平と喧嘩になり、雨の中を修司のもとに駆け込むというシーンが挿入されていました。

もう記憶がごちゃごちゃになっていますね(笑)。

とにかく、修司とユカは同居するようになっており、しかし、いつも不安にかられている修司はユカが寝ているすきにスマホを見てしまいます。そこには良平との間に関係が続いているらしきやり取りがあります。

ユカにスタンドインの仕事が入ります。現場に行きますと撮影のモデルは久子です。撮影の合間、久子はユカにエステのことを書き込んだのはあなたでしょと怒り、飲んでいたコーヒーを頭からかけます。

修司に雑誌の表紙の撮影の仕事が入ります。モデルは久子です。修司はユカに泊まりになると言って出掛けていきます。

撮影の合間に久子がユカって子知っているでしょと声を掛けてきます。この時久子は何を言ったかな? エステで働いているよと言ったんだったか、記憶がありません。

修司が仕事を終え、帰ります(早朝かな?)と、アパートの前で良平がタクシーに乗るところです。部屋に入りますと、ユカが裸でベッドにいます。

言い争いになっていたような…と言いますか、これは言い争うこともないですね。

修司は引っ越すことにします。ユカはどうなったんでしょう? なにか言っていましたっけ?

ラストシーンは、空っぽになった部屋を中から窓を捉えてパンダウンし床のなにか紙をとらえて不意にカメラを上に振る、その中途半端なところで終わっていました。あの紙は何だったんでしょうか? 重要なことを見落としているのでしょうか?

という映画でした。

女はコワイは女性蔑視 

昭和はもうふた世代も前です。仮にこうした昭和的価値観の映画を撮るにしても少なくともユカを軸に描くべきでしょう。

そうすれば、ユカが男を騙して有名になろうとしているなどという昭和のおっちゃんの妄想ではないひとりの人間としてのユカが見えてくると思います。

ユカがある男に「〇〇さんといると安心するなあ」と言い、またある男に「〇〇なら何でも話せる気がするなあ」と言い、またある男に「〇〇が一番私のことわかってるかも」と言いながら、修司に「大好きだよ」と言ったとしてもです。

ユカは「私、ウソついてない!」って言ってるじゃないですか!

とにかく、この映画は「魔性の女」パターンの映画ですが、そういう映画がだめといっているのではなく、この描き方で止まっているからだめなだけで、もう一歩先に進まなければ「女性蔑視」の映画で終わってしまうということです。

少なくとも「彼女はなぜ、嘘をついたのか?」の答えを探る映画にはしてほしかったです。

収穫は金子大地さん

金子大地さん、初めて見ました。いいですね。

過去の出演作を見てみようと…、ん? 「君が世界のはじまり」? とこのサイト内を検索してみましたら、見ているじゃないですか!

ああ、あのちょっと突っ張って大人びた感じの高校生ね。思い出しました、よかったです(笑)。

現在24歳ですか、30歳を越えれば渋いいい役がつく俳優さんになりそうな予感がします。