(DVD)16年前の宮﨑あおい、ARATAがむちゃ新鮮。
この自粛期間中にDVDでみた「黒四角」の奥原浩志監督の2004年の映画です。
16年前です。その時生まれた子供は16歳、20歳であれば36歳、それなりに時の流れを感じるには十分な年数です。実際、この時18歳の宮﨑あおいさんは現在34歳、29歳のARATAさんは現在45歳となり井浦新に改名されています。
年齢の話から入ってしまいましたが、二人ともにその当時をよく知りませんのですごく新鮮に感じました。
宮崎あおいさんは「EUREKA ユリイカ」を見てはいますが幼すぎて俳優として印象づいておらず、名前と一致して記憶したのは「NANA」でした。最近で印象に残っているのは「怒り」がとても良かったです。
井浦新さんのデビュー当時のイメージはこんな感じだったんですね! 出演作品はかなり見ていますが、名前と人物が一致するのは「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」くらいからですので驚きです。このリチオ(役名)、いいですね。
この映画、物語としてはこれといってはっきりしたものはありません。あらすじを書いてもほとんど伝わらないと思います。「黒四角」と同じように俳優の間合いと意識の流れが非常に大切にされており、そうした映画が好きであれば集中して見られると思います。ただし、基本的には男の妄想系ラブストーリーです。
20代半ばくらい(だと思う)のルチオ(ARATA)は子どもの頃の出来事(多分自動車事故)の記憶から逃れられず、生きることの実感が得られないのか、リスカを繰り返して今に至っています。知り合いの中古レコード屋で働いたり、クラブでDJをやったりして暮らしています。
ルチオはアケミ(麻生久美子)とつきあっていますが、二人の関係はこれといって何か将来が見えるものではありません。アケミにはそうしたことを気にかけている感じが見られますが、ルチオはあえて先のことを考えたり話たりすることを避けているように見えます。
アケミには高校生の妹このみ(宮崎あおい)がいます。このみはルチオに興味を持っているのでしょう、高校生らしい自然な振る舞いではあるのですが、ルチオに積極的に近づきます。ルチオにもそれはわかりますので突き放したりしながらも、結局関係を持ってしまいます。
ある日、アケミが出張先で自動車事故にあい亡くなります。
実は、その前日、このみはアケミにルチオと寝たと告白しているのです。なぜ告白したのか、そのひとつの、あくまでもひとつの理由は(おそらく)ルチオにもう会うのをやめようと言われたことだと思われます。
ルチオはアケミの葬儀にもでていません。ある夜、ルチオは車を走らせ、カーブで思いっきりアクセルを踏み込みます。間一髪、車はスピンして止まります。助手席に座る子どもの頃の自分に語りかけます。
いい加減戻ってこいよ。教えてやるよ、あれから何があったか。
カッターナイフを手首に当てるルチオ、しかしその先に進むことはありません。
何日か後、(多分)このみがルチオを呼び出したのでしょう。花束を海へ投げるの、つきあってと二人で海へ向かいます。
その後、間合いとしてはいろいろあり、このみが、ねえ、セックスしようよと言い、ラブホテルでセックスします。さらにいろいろあり、海辺のふたり、このみは、事故の前の日、全部話したの、でも自分のせいだと思っていない、でも苦しい、ちくちくするんだと嗚咽し、ルチオは、心配するな、俺がなんとかするからと返し、このみを抱きしめます。
さらに二人を乗せた青い車は海辺の道路を走ります。後ろの座席には花束がかすかに揺れています。
奥原浩志監督の映画は二本目ですが、どちらの映画からもどんな映画を撮りたいと思っているのかよく伝わってきます。「黒四角」はファンタジーで、この映画は現実のラブストーリー(と言っていいかどうか…)と傾向は異なっていますが、どちらも俳優の間合いを大切してそこからにじみ出てくるもので物語を語ろうとしています。
この映画はどこか映画祭に出品されていないんでしょうか、賞が取れるレベルだと思います。
音楽がとてもうまく使われています。曽我部恵一さんという方です。
なぜか、「黒四角」と同じように、後半になりますとフェードアウトでつなぐシーンが多くなります。
原作があり、よしもとよしともさんの漫画ということであり、この内容が漫画でどう表現されるんだろうとちょっと興味がわきます。