バオバオ フツウの家族

同性愛カップルの話ですが、物語もつくりも乱暴ですねぇ…

子どもが欲しい男女それぞれふた組の同性カップルが取った行動の顛末を描いた台湾映画です。

日本でも報道されましたが、台湾では今年の5月17日に同性婚を合法とする法律が可決されています。

台湾、同性婚認める法案を可決 アジア初 – BBCニュース

バオバオ フツウの家族

バオバオ フツウの家族 / 監督:謝光誠 シエ・グアンチェン

女性カップルのひとりジョアンを演じたクー・ファンルーさんのインタビューを読みますと、合法化されたといっても現実にはなかなか受け入れられない人たちも多いようです。当事者ではない人にとっては「the world will just carry on… life will go on」なのにです。

ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン議員の有名な演説です。特に2分くらいのところからは感動します。


同性婚を認める法案の賞賛されたスピーチ

で、この映画が扱っているのはそうした社会の中の同性婚ではなく、同性カップルが子どもを欲しくなった時の物語です。

かなり乱暴な映画です。

簡単に物語を書きますと、ジョアンとシンディの女性カップル、チャールズとティムの男性カップルのふた組がいます。ロンドンで暮らしています。どんな仕事をしているとかどんな生活をしているのかなど、人物のバックボーンはほとんど語られません。

それぞれのカップルともに子どもが欲しいらしく、人為的に子どもを持とうとします。まずは、チャールズとティムの精液を採取し、シンディの子宮に人為的に注入します。映像としては、ふたりが自慰で採取した精液をジョアンが注射器のような器具でシンディの膣から注入していました。

んー、どうなんですかね、この行為…、それにその描き方…。

もちろん人工授精そのものを否定しているわけではありませんが、なぜそこに至ったかなど4人の心情などまったく描かれず、特にシンディは子どもが欲しいというその気持ちだけで出産を引き受けたということなんでしょうか。まあ、そうしたことを描こうとした映画ではないということでしょう。

とにかく、これでは妊娠できず医療機関で体外授精を試みます。男性二人の精液と女性二人の卵子をそれぞれ受精させ、シンディの子宮に着床させます。そうしたことが可能かどうかわかりませんが双子として妊娠させるということなんでしょう。

この一連の行為について、それぞれが何を考え何を思い悩んだなどということは一切描かれません。ただそうした行為が行われていくだけです。

この映画、映像的にもかなり乱暴なつくりで、物語は時系列では描かれていません。それなりに考えはあるのでしょうが、フラッシュバックという意味合いでもなく、現在と過去が行ったり来たりします。基準となる時間軸もあるようなないような、とにかく、最初しばらくは、突然誰かの親(と後にわかる)が登場したりしますので、誰だ、これ? 何だ、あれ? みたいな感じが続きます。

で、ここは時間軸にそって続けますと、シンディが流産します。と思いましたら、ひとりの流産ですみ、もうひとりは無事と話は続きます。

チャールズがジョアンに、どちらが生まれても約束のお金は払うと小切手を渡します。どちらが生まれてもと言うのは、ひとりは男の子、もうひとりは女の子となぜか勝手に決めており、どちらがどちらを育てるか事前に決めているということのようです。

もうむちゃくちゃな話です。コメディのつもりでつくったのかも知れませんが笑えるものではありません。

シンディが小切手を見つけます。ショック(何に対するショックなのかよくわからないけど)を受けて台湾へ帰ってしまいます。ジョアンも後を追って台湾へやってきます。

このあたりになりますと、台湾でのことなのか、ロンドンでのことなのか、時間軸もぐちゃぐちゃしていますのでよくわかりませんが、何と! チャールズとティムのふたりが自動車事故で死んでしまいます。

オイ、オイ、乱暴すぎるでしょう。

シンディは無事出産し、ジョアンとともに「フツウの家族」を築きました…ということか? という物語です。

おそらく子どもが欲しいと思う同性カップルはたくさんいるでしょう。でもこの映画からその思いや苦悩を感じることはできません。話が乱暴すぎて子どもづくりのゲームのような、いや漫画かな、そんな感じの映画です。

つくりとしてもあらすじを映像化しただけのような映画ですし、それを面白く見せようとしたのか時間軸を意図的にぐちゃぐちゃさせていますし、都合よく人は殺しますし、シンディを軸にしてその辛さや苦悩を追うのならまだしも子どもを生むための道具のような扱いには呆れます。

シエ・グアンチェン監督、若いのかと思いましたら1969年生まれですから50歳です。

キッズ・オールライト (字幕版)