ブリーディング・ラブ はじまりの旅

実の父娘で描く薬物依存にさよならを告げるロードムービー…

ユアン・マクレガーさんが実の娘クララ・マクレガーさんと父娘役で共演したという映画です。監督はこれが初の長編映画というエマ・ ウェステンバーグさん、1990年生まれですから34歳でしょうか。

ブリーディング・ラブ はじまりの旅 / 監督:エマ・ウェステンバーグ

薬物依存から抜け出すための父娘旅…

父と娘がアメリカのだだっ広い荒野を車で移動していくというロードムービーです。目的は薬物(だけではなさそう…)依存症の娘を本人には伝えないままに更生施設に入院させるためです。娘には、絵を学んでいたにもかかわらずやめてしまっているので知り合いの画家に会わせるためと嘘をついています。

経緯が詳しく語られることはありませんが、見ていますと自然にわかってきます。父は娘が4、5歳の頃に家を出てしまっています。具体的なフラッシュバックはありませんがその頃の父は薬物依存症だったようです。幼い娘と楽しそうに遊ぶシーンと家を出ていくフラッシュバックがあります。

それから十数年後です。父は依存症を克服して、今は造園業を営んでおり、妻も子どももいます。おそらく、そこへ娘の母親から電話があったのでしょう。娘が過剰摂取で命を落としそうになり頼ってきたのだと思います。

移動距離は車で17時間とか言っていたと思います。ニューメキシコ州の荒野を車で走っていく感じです。あるのはガソリンスタンドと併設されたコンビニに、15km先にしかないと言っていたドラッグストアに、こうした映画には必須のモーテルにといった感じで、まあロケーションもロードムービー然とした映画です。

pee にこだわるちょっと変わった演出…

内容もまったくもって想像どおりです。

娘がすきを狙って逃げ出す、でも荒野なのでそもそも娘も真剣ではなさそうです。その逃げ出すタイミングはおしっこなんですが、娘が車の陰でするシーンが何回あったでしょうか。理由はわかりませんが、あれだけこだわるということはなにか意味があるのでしょう。

コンビニではお酒を買おうとしても未成年なので買えず、万引きして父の目を盗んで飲んだりします。現実逃避できれば薬物じゃなくても何でもいいということなんでしょうか。

車が故障したためレッカーを呼んだもののちょっとユニークな一団と知り合うことになります。でも大したエピソードもなく終わっていました。ありきたりになることを嫌ったのかよくわかりませんが、そもそもユニークさを強調した一団を出すのであればベタになってもそのまま突っ走ってもう少し明解なエピソードを入れればいいのにと思います。

娘がおしっこをしていて何かに噛まれます。股間ですので父が見るわけにもいかず、そんな時、父が娼婦と思しき女性に声をかけられ、ふと思いつき、娘の股間を見てもらい、お礼にその女性を送る(どこまで?…)ことになります。女性はブロードウェイで成功することが夢だと語り、降りぎわにヘッドライトの明かりでダンスを見せます。

んー、編集でごまかさないできっちり踊れる俳優さんにすべきですね。

実の父娘のキャスティングが裏目か…

で、これも予想通りですが、娘が父の本当の目的を知ることとなり、大喧嘩になり、娘がいなくなってしまいます。父は探し回ります。娘は見かけたジャンキーと思しき男に声をかけ、今の時代、知らない男の車に乗る女がいるのかと驚かれながら男についていき、薬物にありつき、ぶっ倒れて、その後はカットされていますが、翌朝道路に放り出されているところを親切な人に拾われ…、あれ? どうやって父と再会したんでしたっけ? 忘れていますね(笑)。確かモーテルへ戻ってきていました。

そしてラストは、更生施設の前に車をつけ、父が、決めるのはお前自身だと言い、熱い抱擁の後、娘は施設に入っていきます。突然、施設から飛び出す娘、外では父がじっと娘を見ています。再び施設に入っていく娘です。

あまりはっきりしたドラマづくりはされていませんのでわかりませんが、流れからいけば、逃げようとしたわけではないのでしょう。

全体としてもあまりメリハリはなく淡々と進められており、その代わりなのか、娘のドアップを頻繁に入れていました。ただ、娘の方に迷いであるとか、怒りであるとか、苦しさであるとか、孤独感とかの感情表現があまり感じられなく、単に父娘がドライブしているくらいにしか感じられない映画です。

それに鬱陶しいくらいに音楽がついていました。

そもそも実の父子というキャスティングがマイナスに働いているんじゃないでしょうか。実話ではないにしても、内輪の話を見せられている以上の普遍性を感じらるような映画ではありません。

実生活でも離婚をしているとのユアン・マクレガーさんですが、それが2017年であればクララさんは20歳か21歳か、もう成人しているわけですから、この映画が描こうとしているような感情はないでしょうし、逆に言えばむしろ父娘の幸せ感が全編を覆っているような映画です。

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