ガンパウダー・ミルクシェイク

超スローモーションのアクションシーンが唯一の見せ場

映画を見る際の選択肢のひとつにいろんな国の映画を見たいということがあります。残念がら最近はその希望もなかなか叶わなくなってきており、そろそろ配信ということも考えなくてはいけないかと思い始めているところなんですが、この「ガンパウダー・ミルクシェイク」は、ナボット・パプシャド監督がイスラエルの方であり、前作の「オオカミは嘘をつく」にタランティーノ監督絶賛などいう宣伝コピーがついていましたので大いに期待というところです(でした)。

ガンパウダー・ミルクシェイク / 監督:ナヴォット・パプシャド

あまりに残念すぎる…(涙)

「オオカミは嘘をつく」を配信ででも見て済ませておけばよかったです。

見るべきところを強いてあげればラスト近くのダイナーでのアクションシーンを超スローモーションで撮っているところくらいです。

ストーリー、登場人物のキャラ設定、アクション、展開、編集、あらゆる点において新鮮さゼロです。

ストーリーは、単純クライムものに母娘ものを足して、今の流行りなんでしょうか、女性がチームを組んで男たちをやっつけるというアクションで引っ張ろうとしているだけです。そのアクションにしても格闘ゲーム(やったことはないが…)以上のものはありませんし、人物に奥行きを持たせようとの意思もなさそうで、テンポも悪く、ハラハラドキドキ感もないとう、あまりに残念な映画でした。

タイトルにつられて見ないように…

無茶苦茶な書き方をしてしまいました(ペコリ)。

言い訳ついでにもう一つ良い点をあげますと、この映画を見ようと思ったのはタイトルに興味を持ったからです。「ガンパウダー・ミルクシェイク」、日本語としての語呂もいいですし、「ミルクシェイク」だけでも楽しそうなのに「火薬」と「ミルクシェイク」がくっついて何が起きるんだろうとワクワク感(は言いすぎだけど)があります。

ただ、それも残念ながら、主人公のサム(カレン・ギラン)が子どもの頃にミルクシェイクが好きだったらしく、そのサムが成長して殺し屋になったというだけの意味合いで、あまり「ミルクシェイク」は生かされていませんでした。

一応ストーリーは…

ストーリーがどうこうという映画ではありませんが一応記録のために簡単に書きますと、3つのプロットと言いますか、エピソードと言ったほうが正確じゃないかと思うようなことを軸に進みます。

ひとつは、サム(カレン・ギラン)の母スカーレット(レナ・ヘディ)が15年前に突然姿を消しており、そのスカーレットがサムの危機に15年ぶりに助っ人として登場するという母娘物語です。サムはファームというマフィアのような組織の殺し屋として働いて(でいいのか?!)いるのですが、スカーレットも過去同じ殺し屋だったということです。公式サイトによれば「15年前に組織と衝突し、娘サムを置き去りにして姿を消し」たそうです。

2つ目は、殺し屋であるサムが殺した相手が大物ギャングの一人息子だったらしく、その復讐のためにバス一台に乗り込んだ(笑)ギャングたちに追い掛けられるという話です。この単純クライムものがほとんどのアクションシーンをしめています。

そして3つ目が本来メインのプロットになるべきだったと思われる、サムたち女殺し屋チーム対ファームという男性ギャング集団の抗争です。アクション一辺倒ではなく、この抗争を心理戦など織り交ぜながら描けば面白いものになったんじゃないかと思います。

で、ストーリーがどう展開するかと言いますと、まず、15年前のダーナーでのシーンで、スカーレットがファーム内のいざこざ(らしい)でひと暴れして、サムを残したまま姿を消します。

15年後、サムはファームの人事部長(なんやこれ?)ネイサンのもとで凄腕の殺し屋に成長しています。そして、仕事としてですので知らずに大物ギャングの一人息子を殺します。

で、その件はちょっと置いておいて(こういうところが三流なんだよね)、ネイサンからファームの資金を会計係に盗まれたので取り返せと言われ、男を追い、殺してしまいます。しかし、男が金を盗んだのは娘エミリーが誘拐されて身代金を要求されていたからで、それを知ったサムはエミリーを助け出します。ところがその際の爆発でお金が吹き飛んでしまいます。

ファームの重役たち(ギャングの構成メンバー?)が招集されます。結果、サムを消すことになり3人の殺し屋が送り込まれます。といってもこのパートは完全にギャグパートになっており、笑えもしないあれこれのうちにサムがファームの元殺し屋たちに出会うシーンとスカーレットの15年後の再登場のシーンがもうけられています。

元殺し屋たちは図書館に勤務(笑)しています。マデリン、フローレンス、アナ・メイの3人です。なぜ元なのかとか、スカーレットもその同僚だったらしいとか、あれこれ興味はつきない(それほどでもないか)のですが、何も描かれませんのでまったく話は深まりません。

そして、なんの深みもない、サムたち女殺し屋チームとバス一台の大物ギャング集団の格闘戦が始まります。当然サムたち女殺し屋チームが勝ち残ることになり、サム対息子を殺されたボスがダイナーで対峙します。ここ、なにがありましたっけ? よくわからないうちにダイナーのウェイトレスのコスプレをしたスカーレットたちが乗り込んできてサムたち女殺し屋チーム対ギャングたちとのラストファイトとなります。

このシーンは超スローモーションのワンカット(多分)で撮られています。

後日、サムはネイサンを殺そうとしますが、エミリーに止められ(ここじゃなかったか?)生かしておくことにします。

そして、女殺し屋チームは続編に向けて車を走らせます。

オマージュなのかパクリなのか

おそらくタランティーノ監督の映画からの引用はかなり入っているのでしょうし、私にはわかりませんが、なんとなくあれこれ他の監督の映画からのものも感じるところはあります。

そうしたことをオマージュとして評価するのであればある程度の評価も出るかもしれませんが、問題はそれが上っ面だけではなく、その根底になにがあるかということだと思います。その点では残念な映画でしょう。