花腐し

これではピンク映画のレクイエムにはならんでしょう…

監督としては「火口のふたり」以来でしょうか、荒井晴彦監督の「花腐し」です。松浦寿輝さんの同名小説に「ピンク映画へのレクイエムという荒井監督ならではのモチーフを取り込んで大胆に脚色(映画.com)」した映画とのことです。

花腐し / 監督:荒井晴彦

「女優」は男の妄想の言い訳…

DVD ですので集中して見ているわけではありません。

男二人が過去に愛した(寝た…)女を懐かしく語り合う映画です。

女優桐岡祥子(さとうほなみ)がピンク映画の監督桑山と心中します。もう心中というだけで昭和臭が漂ってきます。

2025年の今、心中というものがどの程度の数あるのかはわかりませんが、令和の今、新聞記事になる多くは男が女を殺害するパターンです。

きっと昭和の時代、女性は死に方まで男性に支配されていたということなんでしょう。令和の時代の女性殺害は支配ではありません。男が女を支配できなく殺害に及ぶということです。

いきなり心中した祥子と桑山のシーンで始まるのですが、なぜそうなったかは映画の主要なテーマではありません。あくまでもその祥子を過去に愛した(寝た…)男二人、井関(柄本佑)と挧谷(綾野剛)の話です。

井関は女優を目指していた祥子と知り合います。井関は24歳、童貞だったと言い、祥子も初めてだったと思っています。井関はシナリオライターを目指しています。一緒に暮らし始めます。祥子が妊娠します。堕ろしたようですが、二人に言い争いがあったようなシーンもなかったように思います。早い話、しょうもない男なので祥子が去ったということなんでしょう。

祥子は挧谷と暮らし始めます。

この映画、基本は祥子をダシにして挧谷と井関が男の妄想と欲望を語る映画ですので祥子のことはほとんど描かれていません。

井関も挧谷も昭和ダダイズムを気取った男たちでシナリオライターや映画監督と言いながら「女優」という男の妄想に生きることをよしとする男たちです。

祥子は挧谷の子どもを妊娠します。挧谷が家族を持ちたくないと言っているうちに祥子は流産したようです。そして、それが原因ではなく、ある日、挧谷が祥子に誰だ?と言い、なんのことかと思いましたら、祥子が浮気をしたらしく、祥子は桑山さんと答え、挧谷はただそうかと答え、そして祥子は挧谷のもとを去っていきます。

という、挧谷と井関が祥子の思い出を語り、ピンク映画のレクイエムと言いながら、あるのは AV まがいのシーンくらいで、これじゃ鎮魂歌にはならんだろうという映画でした。

男は姓、女は名ってのはどうよ…

もう令和の時代、男の役名は姓、女の役名は名というのはやめたらと思います。こういうことから人の価値観というのはつくられていきます。

挧谷修一となってはいますが挧谷ですし、井関貴久は井関で、二人とも名のほうが映画の中で出てきたことはないです。祥子は桐岡祥子となっていますが桐岡なんて呼ばれたことはありません。

ああ、これ昭和の話でしたね。いや、2000年代の何年とか出ていたように思います。

昭和の時代も、映画も、ピンク映画も否定はしませんが、この映画は浅すぎます。