ヘィ!ティーチャーズ!

ロシアの新米教師ふたりの1年だが、なぜ退職に解雇ですますのだ?!

ロシアの新米教師ふたりがモスクワから地方都市へ赴任した1年間を撮ったドキュメンタリーです。2020年製作ですので、3、4年前に撮られているものと思われます。

ヘィ!ティーチャーズ! / 監督:ユリア・ヴィシュネヴェッツ

日本でいえば学級崩壊

ロシアの義務教育は6歳から4-5-2制の9年間で最後の2年間は大学進学のための2年間とのことですので、この映画の子どもたちは真ん中の5年間、11歳から15歳くらいということになり、日本でいえば中学生です。

新米教師のエカテリーナとワシリイのふたりがモスクワから地方都市の学校に赴任します。エカテリーナは文学、ワシリイは地理の教師です。ふたりともに初の教職です。

モスクワから着任するシーンから、ふたりに関係があるのかないのかもよくわからない儀式(ラストシーンにもある)があり、すぐに教室シーンになり、その後ほぼ9割方はふたりの教室のシーンです。

その9割方、延々とふたり(もちろんひとりずつ)と生徒との対立シーンを見せられます。生徒たちは私語なんてものじゃないです。教師が言う一言一言に反論してきます。

早い話、映画の中でまともな教育がなされているシーンはありません。意図はわかりませんが、おそらくそうしたシーンばかりが集められているのでしょう。

学校もののドラマでよくある、生徒たちも最初は反抗的だが最後には教師と生徒がわかり合うみたいなそんなシーンもありません。最後まで反抗的です。ただ、最後の別れのときには生徒とのハグシーンもありましたので皆が皆あのひどい状態だったわけではないのでしょう。

結局、エカテリーナは自ら退職し、ワシリイは解雇されます。ワシリイは校長にロマの学級の担当を願い出ますがそれも叶わなかったようです。解雇の理由を映画は語っていません。

何を撮りたかったのだろう?

この映画が何を撮りたかったのか、私にはわかりません。

公式サイトに「監督の言葉」という記事がありますのでそこから拾ってみました。要約です。

  • ロシアの地方の学校ではいまだに子どもたちを小さな兵士のような行儀が良く従順な人間に教育しようとする。
  • しかし、子どもたちは学校以外ではインターネットというまったく違った世界に生きている。
  • この二重化した思考の中で子どもたちは混乱し、教師たちへの不信感につながっている。
  • これがエカテリーナとワシリイのふたりが体験することであり、それはロシアだけではなく世界的な教育環境の現状でもある。

ということのようです。

これをこの映画から感じることは無理です。この認識がどうこうではなく、言っていることが画として撮れていないということです。この映画の中の生徒たちは従順ではありませんし、ネット世界に生きていません。撮れているのは教師たちへの不信感ではなく、学級崩壊(というかどうかはわからない)しているという状態だけです。

もし、この意図していることを撮るのであれば生徒を撮らなきゃ無理でしょう。何年も子どもたちの中に入り込んでカメラを意識しない子どもたちを撮った映画だってあるのですから。

辞職と解雇

エカテリーナの辞職の決断があっさりでびっくりします。好意的にみれば苦悩が撮れていないだけということもありえますが、そうならそれはそれでそれを撮らなきゃダメでしょう。

ワシリイの解雇もまったくもって突っ込みが足りません。なぜ解雇されたのかを撮ろうとしない理由がわかりません。まるで仕込みのように見えるふたりです。