光を追いかけて

中川翼と長澤樹と成田監督のCM的センスで持っている

正月休みにDVD視聴した「光を追いかけて」です。これ、いいですね。タイトルさえ目にした記憶がないということは某地域では公開されなかったということでしょうか。

CMディレクターの成田洋一さんという方が「故郷秋田の地を舞台に学生時代からの目標だった映画の製作を決意(公式サイト)」して撮ったという映画です。

光を追いかけて / 監督:成田洋一

中川翼と長澤樹

中川翼くんと長澤樹さん、現在ともに17歳くらいですので撮影当時は15、6歳ということだと思います。初々しさがとてもいいです。

中川翼くんの方はなんとなく見覚え感がありましたので調べましたら、本人にはっきりした記憶はありませんが「アイネクライネナハトムジーク」と「Arc アーク」に名前が出ています。この映画では台詞のボソボソ感と目がいいです。映画の内容はまったく違いますが「共喰い」の菅田将暉的な将来性を感じます。

長澤樹さんは、こちらも本人に記憶はありませんが「破壊の日」を見ているようです。この映画では真希という役柄と俳優本人の主張する顔立ちがよくあっており、我が道を行く的強さがうまく出ていました。屋根の上でいきなり民謡を歌うシーンはインパクトがありました。本人の歌ですよね。

成田洋一監督

成田洋一監督は長くCM業界で活躍されてきた方ということで、それを知ってこの映画を見ますと、たしかに画の押さえどころがうまいです。特に真希(長澤樹)の撮り方はワンカットで惹きつけるものがあります。まあ、少女の長い髪を風になびかせたり、少女を走らせたりするのは日本のCMのある種のパターンではあります。ドローン撮影を多用しているのもCM的と言えばCM的です。黄金色の田園地帯がとても美しいです。

ラスト近く、教室での閉校祭の準備からの一連のシーン、とてもうまいです。

彰の同級生の生徒が彰の偽アカウントで真希のミステリーサークルをネットに上げたために大騒ぎになるクライマックスです。皆で彰の書いた全員の似顔絵を鷲の形に貼っています。彰が真希の似顔絵を貼っていいかと尋ねています。その頃屋根の上の真希は野次馬にミステリーサークルのことを尋ねられてネットのことを知ります。学校に駆けつけ、部屋に飛び込んできます。彰を責める真希、壁の似顔絵を破ります。なかなか彰に事実を話させません(笑)。そしてことの真相は、真希が涙ながらに彰を責めるツーショットのまま他の生徒の声をオフで入れています。

この一連のカット割りと編集がとてもいいです。どうやって収拾させるのかと思いましたら、音楽と過去の彰と真希の映像でした! さすがCMディレクターです。

どの程度の関わりなのかはわかりませんが、脚本にも成田監督の名前が上がっています。青春ものとしてはとてもバランスのいい脚本だと思います。

過疎の地の青春ファンタジー

過疎化が進み中学校が廃校となる秋田の地を舞台に、東京からの転校生、彰(中川翼)と地元の少女、真希(長澤樹)の出会いを軸にした青春ファンタジーです。金色に輝く田園地帯がロケ地となっていますので、映像からは中学校が廃校になるほどの過疎化は感じられませんが、ファンタジー的にはとてもいいロケーションです。

それに、この映画にはそうした地方の過疎化やそこから波及する地域産業の問題(経営難や休耕地問題)、そして学校内のいじめや不登校など、現実社会が直面する問題がいくつか取り上げられているわけですが、個々の問題にあまり深く入り込まず、それでも一定程度の真面目さが感じられるという意味ではとてもバランスのいい映画だと思います。

こうした問題に具体的な解決を持ち込まず、UFOやミステリーサークルという非現実的なもので希望を表現していることがいい結果に結びついているのでしょう。さらに、ラストを真希と彰が農作業姿で稲刈りをするシーンで終えていることもとてもいいです。

すでに起きてしまったことや先のことを説明しないこともいいですね(笑)。彰は両親の離婚により父親の故郷秋田に転校してきているわけですが、その事情については何も語っていません。転校先の鷲谷中学校はもうひと月ほどで廃校になるとのことですが、じゃあ最初から統合先の学校に転校すればいいのにと思いますが、統合先のことにもまったく触れていません(よくよく考えると時期的には奇妙だが…)。真希が不登校状態になっていることも、同級生に殴りかかったらしいことも、何があったのか何も語られません。

中川翼くんと長澤樹さん、そして美しい田園風景で持っている映画ということだと思います。その点でもやはりCM的と言えます。