あの散漫な原作を(ゴメン…)、国宝級の映画化でした…
国宝級の入りでした(笑)。特に女性客を多く感じました。吉沢亮さん? 横浜流星さん? ひょっとして謙さん? と思ったわけです。歌舞伎ファンということもあるのかも知れません。

見事な映画化でした…
原作を読んでいる者からしますとよくもまあ、あの散漫で面白い(笑)原作をここまでまとめ上げたものだと感心します。
脚本の奥寺佐渡子さんと監督の李相日さんの力でしょう。
映画では、歌舞伎の名跡がいわゆる一家相伝、突き詰めれば「血」によって強固に守り抜かれているものであるとの視点を明確にし、そこに喜久雄という、言うなれば世のはぐれものの典型であるヤクザものの血を引く喜久雄を置き、また最後にはその喜久雄を国の宝である「国宝」にまで高めることで、おそらく暗に権威的なるものへの抗議と抵抗を示しているのだと思います。
まあそれはあまりにも勘ぐり過ぎとも言えますが、原作にはそこまで「血」というものへのこだわりはなく、むしろ喜久雄(吉沢亮)、徳次(映画では冒頭のワンシーンのみ…)、俊介(横浜流星)、春江(高畑充希)4人の吉田修一さんお得意の青春群像劇という大衆小説というのが本当の姿ではあります。
とにかく、原作は2017年元旦から1年半におよぶ連載小説ですので映画ほどの一貫性はありません。批判ではありません。連載小説とはそういうものです。
吉田修一さんは目先を変えつつ物語っていくことがとてもうまい方で、この『国宝』だけではなく『AN通信エージェント・鷹野一彦』シリーズとか、『横道世之介』シリーズとか、連作物がむちゃくちゃうまいんです。
騙されたと思って一度読んでみてください。
原作を読めばもっとおもしろい…
映画のあらすじは原作のレビューとほぼ同じです。さすがにいろいろカットされているところはありますが、むしろ原作の曖昧さをひとつの物語として明確に提示していると評価できるものです。
撮影監督は「アデル、ブルーは熱い色」のソフィアン・エル・ファニさんだったらしく、これも映画化がうまくいった大きな理由かと思います。
とにかく、あの原作をよくここまでうまくまとめ上げたと感じる映画です。