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マルケータ・ラザロヴァー

ネタバレレビュー・プラハの春の時代の宗教物語、あるいは脱宗教か?

2022/07/20

1967年製作のチェコスロバキア(現在はチェコ共和国)の映画です。監督はフランチシェク・ヴラーチルさんという方で1999年に75歳(くらい)で亡くなっています。

日本初公開とのことですが、なぜ今この映画か、発掘してきた方に聞いてみたいですね。と思ったんですが、IMDbを見ましたら、2000年代に入ってからもあちらこちらの映画祭などでちょこちょこと上映されている映画のようです。

  • ボヘミア王国を舞台にした叙事詩
  • 特徴的なカメラワークとモンタージュと音声処理
  • で、この映画はなんなのか?
マルケータ・ラザロヴァー / 監督:フランチシェク・ヴラーチル

ボヘミア王国を舞台にした叙事詩

ボヘミア王国とは書きましたが、実際にはその一領地を舞台にしている話で王国物語的なものではありません。領主間の争いの中の人間模様のような話です。

タイトルになっている「マルケータ・ラザロヴァー」はその片方の領主の娘の名前で上の画像の女性です。ストーリーはあってないような(笑)映画で、ある領主が王国の伯爵を襲ったがために討伐隊を出され、そこに別の領主が絡んできて三つ巴の争いになり、さてどうなるかという話です。

公式サイトのあらすじから抜粋を書きますと、

舞台は13世紀半ば、動乱のボヘミア王国。
領主コズリークの息子ミコラーシュとアダムは遠征中の伯爵一行を襲撃し、息子クリスティアンを捕虜として捕らえる。王は元商人のピヴォを指揮官とする精鋭部隊を送る。
ミコラーシュは、領主ラザルに同盟を組むことを持ちかけるが、拒否され、袋叩きにされる。領主ラザルにはマルケータという将来修道女になることを約束されている娘がいる。ミコラーシュはマルケータを誘拐し陵辱する。

(公式サイト)

ということなんですが、見ていてもこれを理解することさえそう簡単ではありません(笑)。

特徴的なカメラワークとモンタージュと音声処理

なぜ理解するのが難しいかと言いますと、そのカメラワークとモンタージュと音声処理が独特なんです。

カメラワークでは、1967年頃にあんなにアップの映像で動き回る映画ってあったんだろうかとびっくりします。正直あまり美しくはないのですが、カメラワークは今どきの映画のようです。

公式サイトに「極寒の山奥で生活しながら548日間にもわたるロケーション撮影を行なった」とあるようにロケ地は人も住まないような荒れ地ですのでその雪原など引いた画はおとなしいのですが、人物を撮る段になりますと、何を見せようとしているのかわかりにくい画が多くなります。

その画にかぶさってくる音声がまたややこしく、一体誰が喋っているのかわからないシーンがほとんどです。喋っている人物はフレーム外にいたり後ろ向きであったり、さらにすべてアフレコですのでたとえその人物を撮っていても口があっていませんので言葉に現実感がありません。

それゆえそうしたところに意味を見出そうとすればそれが可能な映画ということです。

こう書いていますとなんだかけなしているみたいになってしまいますがそういうことではなく、55年前の映画が今も上映されているわけですからそれなりに意味があるわけで、一体この映画は何なんだろうと興味は湧いてきます。

モンタージュと言っていいのか編集も唐突にシーンが変わって、え? 何? とわけがわからなくなることしきりです。かなり早い段階でマルケータ(だと思うけど?)とミコラーシュ(顔がでないからわからない)の抱擁シーン(セックスシーン?)のようなシーンが挿入されていたと思いますが(間違っているかも)、それもふたりが出会う前なのにです。

そんなこんなで、とにかく一筋縄ではいかない映画です。

で、この映画はなんなのか?

まあ正直よくわからないのですが、映画の終え方から感じることは、いわゆる終末戦争(ハルマゲドン)後のニューワールド世界観じゃないかと思います。

多くの男たちは争いで死にます。マルケータはミコラーシュにレイプされた後、行動をともにしています。それを愛というのは半世紀前の価値観ですが、とにかくミコラーシュは死に、マルケータは生き残ります。マルケータはミコラーシュの子どもを宿しています。ラスト近くにマルケータの独白がありますが、ミコラーシュを愛していたような感じではなかったと思います。マルケータは修道女になるべき人物であったけれどもレイプという屈辱を受け、それでも修道女のマザー(でいいかは?)から癒やしの言葉を受けていましたが、それを拒否していたように思います(間違っているかも)。

もうひとり司祭のような男性が登場し、この人物結構重要で破戒僧的な立ち回りをしています。一度見ただけではうまく整理できない映画ですが、やはりどこか宗教的でありながら、それへの迷いのようなものが感じられる映画です。

1967年のチェコスロバキアと言えば「プラハの春」の時代で、翌年1968年にソ連の軍事侵攻によって以降全体主義化が進んでいます。

とにかくよくわからない映画ですが、そんなことも影響しているのかもしれません。

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