(DVD)篠原涼子ってスゴイね。
面白かったです。DVD鑑賞ながら結構集中して見られました。
人の「生」と「死」の境界線という個々の局面では永久に結論のでないテーマがドラマというフィクションの世界にうまく落とし込まれています。まあこれは原作のものでしょうが、映画としては特に篠原涼子さんの演技が素晴らしく、現実感の薄いセットやライティングの中のリアリティある薫子(篠原涼子)の演技でクライマックスにはホラーにも見えてきます。こういうところは堤幸彦監督の手腕でしょう。
特に、クライマックス、薫子が、脳死状態となっても人工的に生き長らえさせられている娘瑞穂の胸に包丁を突きつけ、今私がこの包丁で瑞穂を心臓を止めれば殺人罪に問われるのでしょうか、と穏やかな口調で漏らすシーンは人の心のうちと社会性、具体的には法ということになりますが、それらの矛盾や齟齬をこのひとこととワンシーンで表現しています。
もちろん現実的には殺人罪に問われることになるのでしょうが、それでもなお人が人として生きるとは何か、人の尊厳とは何かを問いかけてきます。
ただ、その後続く子どもを使っての過剰演出と金魚の糞のように続くエンディングはちょっといただけません。
このあたりはかなり個人的価値観の問題だとは思いますが、枯木のハート型の穴のエピソードであるとか、夜中に瑞穂が薫子に別れを告げる幻想シーンであるとか、脳死を受け入れ臓器移植に応じるとか、瑞穂の告別式であるとか、そこらあたりまでは許容範囲かとは思いますが、さすがに瑞穂の心臓の移植を受けた子どもが冒頭のシーンの子どもであることに至っては映画とは言えやりすぎ感が強すぎます。
ラストシーンの空き地は薫子家族の住まいだったということだと思いますが、あれは原作にもあるのでしょうか? それに何を意図しているんでしょう?
おそらく単に謎を残しいろいろ考えてくださいねと終わる映画の手法なんだとは思います。