占領都市

ドキュメンタリーではなくインスタレーションです…

4時間11分、251分のドキュメンタリーです。途中で10分間の休憩が入ります。

占領都市 / 監督:スティーヴ・マックイーン

ドキュメンタリーではなくインスタレーション…

これはドキュメンタリーではなくインスタレーション、さらに言えば、映画でもなく映像作品です。

ジャンルが何であるかで作品の良し悪しが変わるわけではありませんが、少なくとも何を見るかの事前情報としては重要だとは思います。

つまり、映画を見るつもりで見てはいけないということです。

映像は2020年ごろの現在のアムステルダムの街々が映し出されます。そしてそこに、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに占領され、迫害され、虐殺されたユダヤ人たちの記録がそこに刻まれた記憶のようにナレーションで淡々と語られていきます。

映像の中には、80年近くを経た現在の直接的には関係のないものであっても当時を想起させるようなものが使われていたりします。

たとえば、新型コロナウイルスによるロックダウン下の街並みにナチス・ドイツに制圧された当時のナレーションが流れれば、あたかもそれが80年前の映像であるかのように見えてきます。

およそ4時間、そうした映像とナレーションがいつ終わることなく続きます。

正直なところ、かなりの苦痛を感じます。あるいはオランダ、アムステルダムの住人であれば、日々目にするその場所でそんなことがあったのかと感慨深いものがあるかもしれません。

しかし、そもそもナチスによるユダヤ人虐殺の歴史的事実自体を書物や映像でしか理解していない私のような者にはこの映像とナレーションから何かをイメージすることはとても困難なことです。

スティーヴ・マックイーン監督

スティーヴ・マックイーン監督の映画は2011年の「シェイム」と2013年の「それでも夜は明ける」を見ていますが、そのどちらも私の評価はあまり高くありません。

ですので、これまで特別注目したことはないのですが、今回どんな監督なのかと少し調べてみましたら、もともとビジュアルアートの世界で注目された方のようです。

現在55歳、ウィキペディアには1990年代から活動し始め、ヌーヴェルヴァーグやアンディ・ウォーホルに影響を受けているとあります。その後、2008年くらいから劇映画を撮り始め、その年に「Hunger」という映画でカンヌ国際映画祭のカメラ・ドールを受賞しているようです。

そして「シェイム」「それでも夜は明ける」と続き、その後はビジュアルアート、劇映画、テレビドラマと、特にジャンルにこだわることなく映像作品を生み出しているということのようです。

で、この「占領都市」は妻であるビアンカ・スティグターさんの著書『Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945)』をもとにしたインスタレーションということです。

ということで、かなり疲れた映画でした。

ただ思うことは、こうした一般受けしそうもない映画が制作され、映画祭に出品され、一般公開されることはとても好ましいことだと思います。