正直、たとえ人格障害のようなものが起きるかも知れません。そうした描写こそがこうした映画に厚みを持たせるのではないでしょうか。そうした意図はなかったということなのでしょう。2時間余りにわたって見せられるのは、ある1日を12年に引き延ばしたような2時間です。
200年も続いたアメリカの奴隷制度が単に暴力による恐怖で成立していたとは思えないのですが…。
アメリカの奴隷制度について、あれやこれや言えるほど知識もありませんが、ここに描かれている主人対奴隷の関係は恐怖心によって成立しているという一面でしかないように思います。さらに言いますと、この映画の中の白人と黒人は人間として対等にしか見えません。もちろん、そんなことは現在においてはあたりまえですが、奴隷制度が制度として成立するためには、制度を支える価値観が何の疑いもなく存在していなければ、とても200年は続かないでしょう。暴力だけではない、迷いのない価値観が主人である白人の中に見えないのがこの映画の最大の問題であり、逆に言えば、リアリティを持った人種差別的な映画が生まれなくなったというある意味好ましいことなのかも知れません。
本当のソロモンが置かれた状況は、自らの価値観が100%打ち砕かれる、想像を超えた世界だったのではないかと思います。