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MAAKIII さんフィーチャーの映画ですかね…

タイトルもヴィジュアルも学生の卒業制作を思わせる地味さですが、唐田えりかさんの名前を目にし、また、映画.comの「難解な舞台劇を上演するために集められた4人の女優を主人公に、稽古から舞台本番までの4日間をドキュメンタリータッチで描いた」との紹介に興味をそそられた映画です。

Page30 / 監督:堤幸彦

ケンカはドラマになるが…

ドキュメンタリータッチというわけではないです。相当作り込まれています。

4人の俳優が舞台劇を上演するために集められます。遥(林田麻里)を除いた3人は何も聞かされていません。遥が話し始めます。

皆さんにはこの「Under Skin」という30ページの劇を4日後に上演していただきます。稽古期間は3日間です。結末は決まっていませんが、最後に皆さんで歌を歌ってもらいます。演出はいませんし、誰がどの役をやるかは決まっていません。どの役でもできるようにすべて台詞を憶えてください。

と語りますので、遥は主催者かといいますとそうではなく、運営から説明を依頼されているだけで自分も3人と同じ立場だと言っています。

「Under Skin」の内容はあまりはっきりしてしません。その後稽古が始まるわけですのでその台詞からわかることは、顔に傷のある女が美しい姉への嫉妬と母親への愛憎を語る話のようです。ただ4つの役割がはっきりしていません。姉は映像で投影されますので、女と母以外の2役は何だったんでしょう。劇の中で4人が登場するシーンはありません。子どもっぽい役がありましたので女と母の回想シーンかも知れません。

この劇中劇の内容がはっきりしていないことは映画としてもかなり問題で、後半になりますと飽きてくる(私の場合…)大きな原因になっています。

期待としては劇中劇と現実(映画の中の…)がリンクして思わぬ方に展開していく物語を想像していたのですが、結局のところ、4人のいがみ合いが稽古を重ねるうちにお互いを認めることとなり最後にひとつになるという、まあ言ってみればありきたりの展開ではありました。

とは言っても、やはり喧嘩はドラマになるという定説通りで前半は緊迫感もありかなり見られます。後半になりますと先が見えてきますのでちょっと飽きてくるという感じです。

4人ではなく、樹利亜と琴李2人の映画…

琴李(唐田えりか)はそれなりに名の売れた映画俳優です。ただ、主役を望みながらもなかなか叶わず悩んでいます。

咲良(広山詞葉)は舞台俳優です。舞台俳優の宿命なのか、なかなか収入に結びつかず、琴李への嫉妬を抱えているという設定だと思います。遥(林田麻里)も舞台俳優という設定ですが、進行役ですので軸となっている物語にはあまり絡んでこずにあくまでも仕切り屋です。それに、この映画、一見4人が同等に扱われているように見えますが、咲良と遥は脇役です。

そして、もう一人は樹利亜(MAAKIII)です。ミュージシャンですが俳優への転身を図ろうとしています。演技未経験です。

この映画はこの樹利亜と琴李の映画です。

どういうことかと言いますと、映画は基本、時間経過によって変わっていくものを見せる表現芸術です。4人の中でこの4日間に変わっていくのは樹里亜と琴李です。遥や咲良にはラストの4人が一体となるシーンがあるだけでそれまでの変化が描かれているわけではありません。咲良には何が変わったと言えるものはありませんし、遥にしても台詞で思いを語るシーンがあるだけです。

琴李は自分が名を知られている俳優であるとのプライドから3人に対して高飛車です。もちろんそれはなかなか思うよういかないことや不安感の裏返しなんですが、その高慢な態度が徐々に変化していき、そして、劇中劇のクライマックスシーンである樹利亜の忘我状態には真っ先に駆け寄ります。

樹利亜は自分が演技未経験の素人であるとの思いから卑屈になっていますが、最後には俳優としての自信を得てクライマックスシーンの中心的存在にまでなります。

そのシーンでは樹利亜が劇中劇の主人公である女を演じて完全に役に入り込み、それを見る3人もそれに感情移入し、そこへ真っ先に琴李が駆けつけ、4人が一体となり、劇中劇のテーマソング(かな…)を合唱し、それに観客たちがスタンディングオベーションで答えるのです。

MAAKIII さん、俳優への転身か…

この映画、MAAKIII さんをフィーチャーした映画ですね。と言うよりも、することを意図した映画と言ったほうがいいかも知れません。

MAAKIII さん、初めて目にする名前ですのでなんて読めばいいのかもわかりませんでした。「マーキー」ということであれば最後の文字はローマ数字の「Ⅲ」ではなく「I」が3つで「キー」なんでしょうか。

現在は「DracoVirgo」のボーカルとのことですので、そのままで樹利亜です。

劇中劇の稽古始めにどこかの方言を使ってかなりあざとい演技をしていました。演出だとは思いますが、いくらなんでもやりすぎです。それが最後には標準語の成り切り演技で他の3人に涙まで流させるわけです。

率直なところ、引きます(人それぞれです…)。

唐田えりかさん、後半は完全に食われちゃいました。ただ、これも演出かも知れません。そもそもの狙いということです。