デュオ 1/2のピアニスト

双子の姉妹が手に遺伝性の障害を発症後、二人で1曲を演奏する演奏法で復活…

ピアニストの映画ということで「4分間のピアニスト」を思い出し、また映画.comに「「コーダ あいのうた」のフィリップ・ルスレが製作を手がけ」とあり、別に感動ものが見たいというわけではなく、あるいは同じようにアメリカでリメイクされることもあるのかななどと思い見てみました。

デュオ 1/2のピアニスト / 監督:フレデリック・ポティエ&ヴァランタン・ポティエ

オードリー&ダイアン・プレネ姉妹…

物語は、子どもの頃からピアノ一筋で多くの賞を勝ち得て名門音楽学校に入学した双子のピアニストが、遺伝による障害に見舞われて思うように手を動かすことができなくなり、それを双子ならではの共同演奏で乗り越えるという話です。

プレネ姉妹という実在のピアニストをモデルにした映画です。エピソードは創作でしょうが上の大筋はおおむね事実に沿っているようです。

フランスのオードリー・プレネさんとダイアン・プレネさん(Audrey et Diane Pleynet)の双子の姉妹です。現在50歳くらい(だと思う…)の方ですので、30年ほど前のことをベースに映画はつくられていると思われます。

お二人のサイトがあります。

2013年の11月に東京の大泉学園ゆめりあホールでコンサートを行っているようです。上の姉妹のサイトのギャラリーにその時のものと思われる写真が何枚かあります。著作権がわかりませんのでリンクですが1枚だけ貼っておきます。

経歴には、ストラスブール音楽院で学び、その後カールスルーエ音楽大学に進み様々に演奏活動を行ったものの An orphan genetic disease(希少遺伝病と訳される…)の発症に見舞われて数年間活動できなかったということです。そしてリハビリを経て障害を克服する演奏方法を二人で編み出して2000年頃から再び演奏活動を始めたとあります。

めずらしい親子で共同監督…

というプレネ姉妹の10年におよぶ実話を映画は大学時代の1、2年に圧縮してわりとシンプルにまとめています。いや、シンプルではないですね(笑)、過剰に感動させようというつくりではないという意味です。

監督はフレデリック&バランタン・ポティエさん親子となっており、え? 親子? と思うくらい共同監督というのは珍しいのではないでしょうか。それにこの映画が初の長編となっています。

上はカミーユ・ラザさんのファンクラブのインスタですが、画像の両端が監督で右端がお父さんのフレデリックさんだと思います。中央はお父さん役のフランク・デュボスクさん、右側が姉クレールを演じたカミーユ・ラザさん(だと思う…)、左が妹ジャンヌを演じたメラニー・ロベールさんだと思います。

双子の姉妹を演じたお二人はわりと似ていますし、髪型を同じにしてありますので時々どっち? と迷うことがあります。それに映画の年齢設定は18歳くらいと思われ、二段ベッドで寝ているところなどかなり違和感があります(笑)。

映画のポイントは当然ながら手を自由に動かせなくなった二人がどうやってそれを乗り越えるかという点ですが、意外にもその状況になるのがかなり遅いです。半分くらい過ぎてからだったんじゃないでしょうか。

じゃあそれまでは何を描いているかですが、ひとつは家族関係と姉妹のちょっとした仲違い、そしてもうひとつは音楽学校で行われるコンサートのソリスト争いです。

映画を力強いものにするためにはやはり姉妹が誰にもできない二人だけの演奏方法を見出していくところを分厚く描くべきではなかったかと思います。

ですので映画はわりとあっさりしています。

やはり、肝心の本筋に入るのが遅すぎる…

映画では家族は家父長一家として描かれています。父親セルジュ(フランク・デュボスク)は元水泳選手だったのですが怪我のためにその道を断念し、その思いを双子の姉妹に託しています。幼い頃のコンテストでも2番はダメだといって憚らず、かなり過剰な期待をかけています。

母親カトリーヌ(イザベル・カレ)は家で絵を描いたり、姉妹のコンサート用のドレスを作ったりするのですが、もともと有名メゾンで働いていたものを結婚のために辞めており、姉妹に自分は夢を捨ててあなたたちのために生きてきたとか、姉妹からはお父さんの言うなりじゃないと責められたりします。

妹ジャンヌ(メラニー・ロベール)はあがり症の設定になっています。ただ一貫はしていません(笑)。姉クレール(カミーユ・ラザ)はその妹をずっと庇ってきていることから常に前に立つことが当たり前と考えています。

そうした内なる家族問題を抱えた姉妹がドイツのカールスルーエ音楽大学に入学します。ストラスブールから直線距離で70kmくらい、TGVで45分くらいです。

学校でのシーン、まずは演奏レベルに応じてクラス分けのシーンです。男性の熱血教師レナートがいます。レナートが自分のクラスかそうでないかを判断します。クレールが先に演奏してレナートクラス、その後ジャンヌが演奏しますと、レナートは「本物はひとりいればいい、コピーはいらない」と言い、ジャンヌは別のクラスとなります。やや落ち込み気味のジャンヌに対してクレールはあなたが先に演奏していればあなたがレナートクラスだったと慰めます。

その後、時間経過ははっきりしませんが演奏会のソリストの選考があり、これにもクレールが選ばれます。

この映画、姉妹の挫折からの復活という本筋以外にもいくつか仕込みがしてあり、すでに書いた家族問題はもうひとつの軸ともいえるものになっていますが、ほかにもクレールに対してライバルの学生をおいていたり、クレールに近づいてくる男子学生に対してクレールもまんざらではなさそうとしたりしています。

こうしたことが必要であったかどうかは微妙ですが、とにかく様々なことから姉妹の間がややぎくしゃくするところをみせています。そしてある日のこと、クレールが親しくなった男子学生と遊ぶために夜こっそりとカールスルーエまで出かけていきます。上にわざわざTGVで45分と書いたのは、このとき、え、今からドイツまで?と思ったからです。まあ若い時なら可能な時間ですね(笑)。

これを父親が知ることとなり、迎えに行った際にクレールのスマートフォンを取り上げたことからクレールは手首を捻挫します。

クレールの演奏レベルが一気に低下します。レナートの「セッション」まがいのレッスンシーンです。学生のことよりも自分のプライドが大切なレナートはクレールを見切り、ソリストとしてジャンヌに白羽の矢を立てます。

ジャンヌのレッスンが始まります。いきなり映画の空気が変わり(笑)、ジャンヌの視線としてレナートの口元のどアップが何カットも挿入されるようになります。オイ、オイ、という予想通りの展開で、ジャンヌの方からレナートにキスをし、そして…ということになり、この件は終盤になり、ジャンヌ自らクレールに告白し、え、どこで?と尋ねるクレールにジャンヌはピアノの上でと答え、二人で笑い合うことになります。こういうところがフランス映画ですね(笑)。

なぜこんなに詳しく書いているのか自分でもよくわかりませんが、単純にみえて結構入り組んでつくられている映画ということかも知れません。

そして、あっと今に画期的な演奏法を…

クレールの手首に異常が現れはじめ、CTで調べますと捻挫ではなく遺伝性の障害で元に戻ることはないことがわかります。その頃ジャンヌの演奏レベルも低下し始めています。ジャンヌにも同じ障害が発症し始めています。

ここから先はあっさりしています。し過ぎです(笑)。ここからをもっと分厚く描かないと。

姉妹は学校を退学します。劇場の案内係として働くシーンがありました。これですね。

ピアニストの道をあきらめられない姉妹は手首に負担をかけずに演奏する演奏法を考えます。そして母親が学長に掛け合い、レナートがジャンヌと関係を持ったことで脅し(母親すごい!と言っていいのかどうなのか…)、再入学を果たします。姉妹はレナートではないもうひとりの教師のもとでレッスンに入り、譜面を分解し二人でひとつの曲を演奏する演奏法を身につけます。双子だからできると声を合わせて言っていました。

そして演奏会です。著名な指揮者がジャンヌの演奏を買っており、ジャンヌでなければダメだと譲らず、レナートも折れてそれを認めたことになっています。ツッコミ無用です。

クレールが不安感から(かな…)演奏できないとトイレにこもってしまいます。すでにオーケストラも指揮者もステージに上がっています。ステージにはピアノが1台、ジャンヌが呼ばれて入ります。父親がトイレに駆けつけクレールを説得します。

何を話していたか記憶はありませんが、期待をかけすぎて悪かったとか謝っていたようなことだったでしょうか。

そしてステージにはもう1台のピアノが運び込まれ、クレールもステージに上がります。怪訝な顔の指揮者です。リハーサルなしかよってツッコミ無用で、姉妹の見事な演奏があり、万雷の拍手で映画は終わります。

まあ映画ですからこういうのもいいとは思いますが、やはりクライマックスで首をひねるような展開は避けるべきかと思います。それに何度も書いていますが、家族物語はほどほどにして、やはり本筋をもう少し突っ込んで描かないと折角のいい話がもったいないと思います。

リメイクはあるのでしょうか。