Red

昭和(バブリー)的昼メロ&女性旅立ちドラマ

しばらく前までは、邦画はほとんど DVDですましていたんですが、最近では劇場で見る比率が上がってきています。多分、単館系の洋画の上映が東京以外では少なくなっているからでしょう。

「Red」

正直、見ながらなぜこれを見ようとしたのか、何気なくクリック(予約なので)してしまったような記憶しかなく、自分ながら不思議でした。

つまり、後悔しながら見たということです。

Red

Red / 監督:三島有紀子

ひとことで言いますと、昭和の昼メロです。

Red

Red

  • 作者:島本 理生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/09/24
  • メディア: 単行本
 

原作があります。2014年ですね…本当にこの映画のような内容なんでしょうか。

とにかく、価値観が古すぎます。物語そのものもそうですし、家族の描き方から人物造形、さらに言えばオチまで古すぎます。

大手企業(だと思う)に勤める男と結婚し、まもなく小学校に上がる娘を持つ女が、10年前に付き合っていた男と再会して再び関係を持つようになり、その男の死をきっかけに娘と夫を捨て自らの道を歩む決心をするという話です。

ん? 結構新しいか?(笑)

描き方によっては新しいものになったかも知れませんが、延々と続く不倫ドラマは単調で抜け道もなく、かといって閉塞感があるわけでもなく、ただセックスのみという情感のなさです。

女、村主塔子(夏帆)の家庭の描き方もまた陳腐で、夫、村主真(間宮祥太朗)はマザコン、母親はハイソを気取っており、いつかテレビドラマで見たような空虚さ、塔子の居場所のなさの表現なんでしょう。

塔子が再会する男、鞍田秋彦(妻夫木聡)は、塔子が学生の頃にアルバイトをしていた建築事務所のオーナー建築士で、その再会のシーン、鞍田の誘い方はトレンディードラマ系で、ふたりは再会初回で濃厚キスとなり、不倫ドラマへと進みます。

  

8割方、この不倫ドラマの過去と現在が切り替えされて進みます。

現在のシーンは、塔子と鞍田が吹雪に近い雪の中を車を走らせるシーンです。これも延々と続き、途中、食事に立ち寄った店で、鞍田は血を吐き倒れます。

この現在と過去の関連がわからないことが気になることはありません。どういう状況であれ、ふたりの逢瀬(古い?)のひとつなんですから、雪といえば「失楽園」かな? 現実から逃げているんでしょう程度の感覚で見ていけます。

逆でした。逃げているんではなく、現実に戻ろうとしているんでした。

これ、新しそうで実は新しくないのです。なぜなら、鞍田は死を覚悟していますし、塔子もそれを知っているからです。

鞍田は、塔子と別れた後、離婚し、建築事務所をたたみ、今は友人の会社で働いており、塔子との再会後、塔子をその会社に就職させています。鞍田は白血病(違う病名だった)を患っていると告白します。それも会社をたたんだ理由のひとつなんでしょう。

鞍田が体調を崩し休んでいる時に新潟へ行くべき案件があり、塔子が代わりに行きます。しかし、大雪で帰れなくなります。夫に電話をすると、すぐに帰ってこい、タクシーでも何でも使って帰ってこいと言われ、塔子がとぼとぼと雪道を歩いていますと、鞍田が車で待っています。

なんで? というツッコミ無用でふたりは東京へ向かい、そして途中で血を吐き、最後のセックスをどこかでして、そして鞍田は死にます。

塔子は夫に私はひとりで生きていくと宣言し、娘と夫をおいて去っていきます。

昭和的昼メロドラマに女性の自立をくっつけたような映画ということです。

三島有紀子監督の映画は「幼な子われらに生まれ」を見ていますが、同じように「中途半端な古臭さを感じる」と書いています。現在50歳、バブル期に青春時代を過ごされているのでしょう。その価値観がそのまま映画に現れているのだと思います。

幼な子われらに生まれ

幼な子われらに生まれ

  • 作者:重松 清
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1996/08
  • メディア: 単行本