#真相をお話しします

真相は、原作者あるいは脚本家や監督に女性蔑視観が潜んでいるということでしょう…

アイドル映画だろうとスルーしていたのですが、ふと監督の豊島圭介さんの過去作に「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」があるのを知り、また内容に記憶はないのですが「森山中教習所」を見たような記憶があり、迷いに迷って(笑)ポチっとしてみました。

#真相をお話しします / 監督:豊島圭介

匿名は匿名じゃないよ…

ネットに匿名で投稿したりすると危ないよという警告映画でした。でもないか(笑)。

「#真相をお話します」というユーチューブの生配信チャンネルがあり、そこでは視聴者が匿名で参加してこうこうこういうことがあったんだが真相はこれですと話をして投げ銭を稼ぐという趣向で人気を博しています。スピーカーと呼ばれる話し手はチャンネル管理者が選ぶわけですが、話によっては何百万円と稼げるらしく多くの人が指名されることを待ち望んでいます。

その日の生配信でも3人が指名されて「#真相をお話し」してそれぞれ300万円くらい稼いでいきます。

で、最後に、そのチャンネル管理人自身が「#真相をお話し」し始めて、視聴者である匿名の登録者たちに究極の選択を迫るという話です。

その究極の選択とは、実は動画配信者(たち)は子どもの頃に知らず知らずのうちに盗撮されてネット配信されていた犠牲者であり、その復讐のために「#真相をお話します」チャンネルを立ち上げ、今その加害者の一人を拉致して、視聴者たちにこの人物を殺すか自分たちの個人情報をネットに晒すかの選択を迫られるということです。

ネットで個人情報を晒されるということは実生活が立ち行かなくなるということで、その例としてその日のスピーカーの個人情報がその場で晒され、稼いだ投げ銭もその場で不正アクセスによりゼロになってしまったり、住まいの外が騒がしくなったりという描き方がされています。

「#拡散希望」が全文公開されていた…

そういえば映画.com の解説に原作があるとあったと思いググりましたら、

これでした。結城真一郎さん、1991年生まれですから34歳くらいの方です。東大法学部卒業ですね。法廷ものとかも書いているんでしょうか。

新潮社に「#真相をお話します」のサイトがありました。

「惨者面談」「ヤリモク」「パンドラ」「三角奸計」「#拡散希望」5作の短編集で、映画ではこのうち「パンドラ」を除いた4作が使われています。なお、上の新潮社のサイトでは「#拡散希望」が全文公開されています。

え、漫画にもなっているんですか?

たしかに筋を追っていくだけの話ですので漫画になりやすい話ではあります。

女性蔑視観が潜んでいる…

ちょっと映画の話を書いておきますと、おそらくこの短編集にはユーチューブの生配信チャンネルというものはないと思われますのでそれを使ってうまく1本の映画にまとめているのではないかと思います。

原作「#拡散希望」のサテツを映画「#真相をお話します」のチャンネル管理人(岡山天音)に当て、他の3つの短編「惨者面談」「ヤリモク」「三角奸計」をそのチャンネル内で匿名視聴者のスピーカーのネタとして展開し、そのひとつ「三角奸計」のスピーカー桐山(菊池風磨)の友人鈴木(大森元貴)を原作「#拡散希望」のチョモランマに当て、オチとして実はこれはサテツとチョモランマが仕組んだものであり、ネット上の倫理観を欠いた興味本位の行為がいずれ自分に災いとして返ってくるとまとめています。

ただ、原作を含めて基本的なことを言えば、この映画は女性蔑視観の上に成り立っています。

「惨者面談」では息子を失った母親とその隣人の母親の争い事件ですし、「ヤリモク」ではパパ活を装って美人局をしている女性の話ですし、「三角奸計」では二股を掛けて男を騙している女ですし、「#拡散希望」でも女の子の一人を加害者にし、もう一人をその子に殺させることで物語をつくっています。

どの作品も女性を悪者にし、そして男たちは犠牲者を装おって成り立っています。

こうした価値観は現在の社会全体にもあるものですので一概に結城真一郎さんだけのものではありませんが、少なくとも法律を学んでいるのであればもう少しよく考えたほうがいいとは思います。

ということで、こうした映画を見て、また原作や漫画を読んだりして、さらにこうした価値観が増幅されていくのかと思いますと暗澹たる気持ちになる映画ではあります。