イザベル・ユペールさんはシュールなんですが、映画はシュールにならず、ジョーク?…
イザベル・ユペールさんだからということでポチッとした映画ですが、なんと言っていいかよくわからない映画でした(笑)。エリーズ・ジラール監督? とサイト内を検索してみましたら7年前に「静かなふたり」を見ていました。それにその映画はイザベル・ユペールさんの娘ロリータ・シャマさんが主演でした。
シュール? キミョウ? ジョーク?
その「静かなふたり」のレビューを読み返してみましたら「かなりシュールなフランス映画」と書いています。あまり思い出すシーンもないのですが、とにかく奇妙な映画だったようです(笑)。
この「不思議の国のシドニ」も奇妙な映画ですね。
フランスの作家シドニ(イザベル・ユペール)が日本の出版社の要請でサイン会(だと思う…)のために来日する6日間を描いています。アテンドするのは編集者の溝口健三(伊原剛志)です。このネーミングからしておふざけ? と思っちゃいますわね。
この映画のポイントは2つです。ひとつは、シドニが初めての来日ということから様々な日本の習慣(じゃないけどね…)に戸惑う様子が描かれます。
まず、いきなり関空に着いたシドニを迎える溝口の行動で笑えます。握手を求めるシドニにお辞儀で返す溝口、まあそれはいいにしても、その後、シドニのキャリーケースを取り、そしてなんと! シドニが肩に掛けているショルダーバッグまでひったくるように取ってしまいます。
そんなことする奴は日本だけじゃなくどの国にもいません(笑)。
一事が万事この調子で進みます。溝口は次第に打ち解けていく役柄ですのでこのシーンくらいですが、その後、ホテルや旅館に行けば、スタッフがお辞儀をしまくったり、とにかく過剰なサービスと思しき行為を無言で繰り返すのです。
結局、エリーズ・ジラール監督には、あるいはヨーロッパ人(概念として…)には日本人がこう見えているだろうということを誇張してやっているのです。
もちろんマジでそう思っているわけではないことは、現実感を感じさせない画のつくりでわかります。すべてのシーンでエキストラを一切使っていません。空港でも、ホテルでも、列車でも、観光地でも、新幹線でもふたり以外には登場しません。
それが一見シュールに見える、んー、違うなあ、奇妙なだけだなあ、んー、ジョークかもしれないなあ、と思える映画ということです(笑)。
いくら何でも2024年の今、マジはないと思います。
きっとそうなるね、やっぱりそうなったね…
この映画のポイントのふたつ目です。
シドニは、今なにも書けなくなっています。きっかけは夫アントワーヌ(アウグスト・ディール)を亡くしたことです。
今回の来日はシドニのデビュー作『影』の再版を期して溝口が是非と強く求めたということなんですが、その『影』を書くきっかけになったのは、シドニが父と誰か(だったように思うけど違うかも…)の死による喪失感に打ちのめされているときにアントワーヌと出会い愛し合うようになったことだといいます。
フランス映画ですからもうわかりますわね(笑)。そうです。溝口と出会い、愛し合うようになり、シドニは書けるようになります。
それがどう描かれていくかといいますと、アントワーヌの幽霊です。シドニは行く先々でアントワーヌの幽霊を見るようになります。最初はホテルの開かない窓が知らぬ間に開いていたりする程度ですが、ある時アントワーヌが姿を現し、シドニは驚きます。それが2度ほど続き、話しかけるようになり、ある時抱擁しようとしますとすり抜けてしまうという具合です。
幽霊の登場と同時進行で溝口との関係が変化していきます。きっかけは溝口がホテルのバーで飲んでいるときに妻との関係を話し始めたことです。溝口は家では妻と話をすることもないと言い、妻からのメールをシドニに見せます。シドニには読めないと思いますけど、あなたを理解できないというような内容だったと思います。
この男性像は当たっているかもしれないですね(笑)。
それにしてもわかりやすい演出がしてあります。溝口の服装がどんどん変わっていくのです。ダークスーツにネクタイに色付き黒縁メガネが順次、ネクタイを取り、ジャケットを脱ぎ、カジュアルな服装になるといった具合です。
そして、シドニの変化につれてアントワーヌの幽霊は次第に薄くなりやがて消えていきます。
ふたりが愛し合うシーンはスチル写真10枚くらいで構成されていました。
そうだ 京都、いこう。いざいざ奈良、そして直島…
シドニはメディア(なのかよくわからなかった…)の取材やサイン会をこなしながら、溝口の案内で京都、奈良、そして直島を巡ります。
画は旅行会社のパンフレットや観光協会のホームページのような映像が続きます。ホテルや和風旅館もそうした画像の中にイザベル・ユペールさんがいると想像すればいいです。
美しいですがそれ以上のものではないということです。
そして最後は新幹線で富士山を見ながら東京へ行き、なぜか突然お土産を買おうと街へ出てみたらそこは大阪(笑)、紙袋をたくさん抱えてホテルへ戻る様はなにかのジョークかと思うもののよくわからず、その夜ふたりは愛し合い、そして翌日、シドニはフランスへと旅立っていきました。
やはりシュールにはなっていませんね。
でもイザベル・ユペールさんはいつもシュールです。